その日、俺は緊張していた。
なぜか。
それは、うちの1歳半になる四女の初めてのトリミングに行くことになっていたからだ。
うちの四女はロングコートのチワワ。
色が珍しいらしく、イザベラクリームという色だ。
最近、うちのフローリングを四女が駆け抜けると、
「ちゃっちゃっちゃっちゃっちゃ…」
と音がする。
爪が伸びているのだ。
四女は、根っからの「爪切り嫌い」だ。
シャワー、耳掃除、ムダ毛カット、ブラッシング、大抵のことは身を預けてくるが、爪切りだけは逃げ回る。
無理に切ろうとすると、
「きゃいん！」と、痛みがあったかのような声を出す。
爪切りを持っただけで、警戒し俺から離れる。
うちの奥方や長女たちと相談し、これはプロに任せた方が賢明だろうという結論を家族会議で出した俺たちは、散歩コミュニティの大御所に相談した。
その散歩コミュニティの大御所
「セレブよこはマダム」
の飼い犬のトイプードルは、いつもいい匂いだ。
そして、散歩で会うたびに洋服を新調してもらっている。
その「セレブよこはマダム」に相談したところ、行き付けのペットサロンを紹介して頂いた。
そう。今日は、その紹介いただいたペットサロンで初の四女のトリミングなのだ。
これは緊張しないわけがない。
「セレブよこはマダム」からご紹介いただいたペットサロンはこちら。
「EMICIA」
横浜市・トリミング、ペットホテル-PET SALON EMICIA（ペットサロンエミシア）-
名前からしてセレブだ。聞くところによると、ドッグランまで完備されているらしい。
「セレブ」という言葉からは縁遠い俺が行っても良いのだろうか。
そんな疑問が、俺をさらに緊張させる。
スーツにネクタイに着替えた俺は、四女を車に乗せ、EMICIAに向かった。
緊張の余り、ナビがあったにも関わらず、迷って数分の遅刻。
ペットサロンに到着した四女も、片足を上げて緊張の面持ち。
初めてということもあり、一通りうちの四女のことをお話しして、四女を預けた。
「1時間くらいで終わりますよ。」とグルーマーの男性。
「よろしくお願い申し上げます。」と、俺。
どこかのお店でコーヒーでも飲もうかと思っていたが、なんだか四女が一人ぼっちで不安な時に俺だけ優雅にコーヒーをしばく訳にもいかんと思い、周辺の街をゆっくり散歩。
土曜日の午後、手ぶらのスーツ姿の男性が散歩する姿は異様だ。
そして1時間後、終了したとの連絡を受け、ダッシュでペットサロンへ。
俺、四女を見つける。
四女、俺に気付く。
俺、笑顔になる。
四女、うれしさの余りジャンプする。
よっぽど不安だったのか、四女は物凄いすり寄り方だ。
俺はスーツだが、この際どうでも良い。
「シャンプーやカットは大丈夫でしたが、爪切りは嫌そうでしたね。」とグルーマーの男性。
そうだよね。そうだよな。
「そうでしたか。」
グルーマーの男性にお礼をし、車に乗った四女と俺。
俺も緊張しすぎて疲れた。
が、四女はもっと疲れたようだ。
助手席に座った四女は、ものの数秒でオヤスミの体勢。
よっぽど疲れたんだろうな。
家に着くまでの数10分、ゆっくり休めよ。
そして帰宅後、四女の仕上がりを確認したが、完璧。
「セレブよこはマダム」が行き付けになることも頷ける。
爪はというと、、、
すごく綺麗。
歩くときにしていた「ちゃっちゃっちゃ音」もしない。
四女のトリミングを初体験したうちの家族。
今晩の晩飯は赤飯を炊かなければな。
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