うちの両親は、お互いの悪口を言うことは、ほとんどなくって。
お父さんはいつも、
「ママの作る料理は、世界で一番美味しい」
「ママは、美人で有名で、ファンもいたんだぞ」
って、言っていた。
お母さんは、
「パパは、福井では一番カッコ良かった」
「パパが仕事頑張っているから、みんな楽しくいられるんだよ」
って言っていた。
だから、
「ママは美人で、パパはカッコいい」
って素直に思っていたし、
「ママの作る料理はすごく美味しい」
って思っていたし、
「パパが仕事を頑張っていることは本当にありがたい」
って思っていた。
子どもの頃。
自分にとっての両親は、男性とか女性ではなく、「親」という絶対的な存在で。
他の大人とは、やっぱり全然違くって。
なんて表現すれば良いのか分からないけど、お父さんとお母さんは、めちゃくちゃ仲良しで、絶対的な関係なんだと感じていた。
両親が言うことは、絶対だと感じていた。
*****
うちの家族は、みんなで一緒にお酒を飲むことが好きで、実家に帰省すると、毎回夜遅くまでみんなでお酒を飲む。
そんなときには、やっぱり昔話で盛り上がることが多い。
その昔話の一つだ。
たぶん、自分が高校1年生の頃。
部活が終わって18時過ぎに家に帰ると、部屋は真っ暗で、誰もいなくって。
夜ご飯も特に用意されていなくて、カップ麺なんかもなくって。
「これは一体?」
って思いながら、母親の職場に電話をした。
すると、
「これから飲み会になっちゃったから、もしお腹空いているなら、〇〇に来てね」
ってな感じの流れで、母親の職場の方々の飲み会に参加することになった。
その飲み会は、カラオケBoxで行われていて、部屋に入ると、すげータバコ臭かった。
目が痛くなるくらいの煙で。
薄暗い部屋の中、結構大勢の人たちがいて、その中から母親を見つけると、男性に挟まれて座っていた。
そして、近くに座っていた男性が、
「あれ?この子が〇〇さんのお子さん?」
「ずいぶんと大きいお子さんがいらっしゃるんですね!」
ってな感じのことを言っていた。
「なんなんだ、この空間は?」
あまりにも初めてのことが多すぎて、頭がオーバーヒートしながら、不味いポテトとか乾いたキャベツなんかを、頬張っていた。
母親は、少し酔っぱらっているようで、男性からボディタッチされたり、
「あら、やだぁ~」とか言いながら、男性をポンと叩いたりしていた。
この日。
これまで絶対的な「母親」という認識が、くずれた。
あぁ、お母さんも社会で生きている一人の女性なんだな、って。
でも、お父さんとすごく仲の良い夫婦だと思っていたのに、他の男の人とボディタッチとかするんだと、ものすごくショックを受けた。
今では、その時のことを何とも思っていないけれど、
その時のショックの大きさを伝えたくて、やっぱり自分にとっては大きな出来事だったことを伝えたくて。
この話をすると、母親は、
「あれは、本当に申し訳なかったね。」
「刺激が強すぎたよね。」
「ちょっとまだ若かったもんね。」
と、ものすごく反省した感じになってしまう。
そんなことを言わせてしまう自分が、なんだか申し訳ない。
*****
自分くらいの年齢になって、飲み会の席で、異性の隣になったり、ちょっとしたボディタッチがあることなんて、まぁ、普通にあり得ることだ。
SNSで、異性とやり取りしていることなんかも、まぁ、普通にあり得ることだ。
でも、もしそんな自分を、娘たちが見たとしたら、娘たちはどう感じるだろうか。
「ママのパパ」
だし、
「パパのママ」
だと思っているであろう娘たちはどう感じるだろうか。
あの日の俺が感じたようなショックを受けるんじゃないだろうか。
「そんなことが普通に起こるのが、実はそんなに変なことではないんだよ」
そう、親が言ったとして、娘たちが素直に受け止められるような日は来るのだろうか。
でも、俺のお母さんも普通の社会人の女性の1人なわけで。
この歳になった自分は、当時の母親と同じようなことをしているんだけど。
それでも、「自分のお母さんはそんな感じではない」って思いたい部分があって。
でも、「やっぱりお母さんも、社会を生きる女性の1人」なんだと頭では理解していて。
そんな矛盾。
うちの娘たちは、そんなことを考えてしまう時期は、いつか来るんだろうか。
でも、娘たちにはいつまでも「クリーンな父親」と思われていたいな。
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