モデルナワクチン2回目接種から二日後の午後。
平熱に戻っており。
若干の体のダルさは残っていたものの。
無事にディズニーランドホテルにたどり着いていた。
宿泊した「ティンカーベルルーム」は、見事なまでにティンカーベルの世界観が表現されており。
俺以外の女子たちは、
テンションマックス。
特典として付属していたディズニーモノレールの2Daysパスを利用し乗車したモノレールの中でも、
テンションマックス。
ロビーに設置されたミニチュアハウスの前でも、
テンションマックス。
「夢の国」のその圧倒的な雰囲気を堪能する娘3人+奥さん。
その横で、俺は。
数日ぶりのビールを片手に。
スズランの形をしたライトの下で。
イクスピアリの本屋でゲットしたこちらの雑誌を広げ。
巻末の特集、
「自分史上最高のコーヒーを淹れる方法」
を読みながら、独自の夢の国を作り上げ、心を躍らせていた。
~~~~~
子どもの頃。
両親が飲む、「コーヒー」に、えも言われぬ憧れを抱いていた。
うちら子どもが使っているプラスチック製のコップとは違う、
白にブルーで綺麗な模様があしらわれた、瀬戸物のカップに入れられた、
真っ黒で、いくらか油のような照りがある、
ブラックコーヒー。
少し飲ませてもらうと、その香りと苦さに、
「これを飲めるようになったら、大人になれる。」
的な想いを持っていた。
テレビでは、良く分からないおじさんが登場し、
「違いがわかる男のゴールドブレンド」
「ダバダー、、、」
と、やたらと耳と頭に残るCMが繰り返されていた。
良く分からないおじさんがコーヒーを飲むその姿が印象的で。
コーヒーを飲めるようになれば、
「違いがわかり、良質を知る、大人の男になれる」
そんな想いが芽生えていた。
福井県にある父の実家は、八百屋をやっていて。
帰省をするたびに、おじいちゃんに100円玉をもらっては、店の前の自販機で、缶コーヒーを買った。
ポッカの砂糖入りまくりの甘い缶コーヒーだ。
この甘いコーヒーを飲んで、少し大人に近づいたような気になっていた。
大学時代。
授業と授業の合間の休み時間に。
タバコを吸う友人とともに、自販機でホットコーヒーを買い、
キャンバス内のベンチで休憩する。
タバコの煙と、ホットコーヒーの湯気。
それが、なんだかカッコイイような気がして。
結婚してから。
毎朝、インスタントコーヒーを飲むようになった。
砂糖あり、牛乳ありのカフェオレ的な感じで。
でも、子どもの頃に飲んだあのコーヒーとは違うもの。
最近、キャンプのYouTubeをよく見ており。
その中では必ずと言っていいほど、
コーヒーミルで豆を挽き、コーヒーを愉しんでいる。
その優雅な感じが、たまらなく贅沢に思えるようになってきて。
そして、今俺が手に持っている雑誌には、コーヒーの特集が組まれている。
「もしかしたら、今かもしれない」
と、
スズランのライトの下で、1人高揚し始め。
「違いがわかり、良質を知る、大人の男への第一歩を踏み出そう」
そんな想いが、体中に満ち溢れてきて。
買ってしまった。
タイムモアのC2、というコーヒーミル。
そして、カルディに豆を買いに行き。
SOTOのバーナーをセットし、登山用に昔購入した小型ケトルで湯を沸かし。
初めてのコーヒーミルで、豆を挽き。
90度に冷ましたお湯を注いで、ドリップする。
家じゅうにただようコーヒーの香り。
そのすべての所作を愉しみながら。
贅沢な時間を過ごす。
自分史上初めて、豆から挽いたコーヒーの、その味たるや。
「すっげー、苦い。」
そんなファーストインプレッションも。
奥さんに、
「どう?」
と、聞かれた俺は。
「なんだか、いつものと違って、本格的で良質な味がするよね。」
と。
違いがわかり、良質を知る、大人の男
を演じてみる、
まだまだ子どもの俺。
さてと。
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