三女が小学校を卒業するとともに、
4年間のPTA会長の努めを終えたのだが、
校長から懇願され、自分は、
娘たちが通ってきた小学校の「学校運営協議会」の委員になった。
学校運営協議会の存在を知らない保護者が大半だと思うが、
学校運営協議会は、保護者や地域のメンバーなどが構成員で、
学校の教育方針や運営を議論し、承認する組織である。
自分の場合は、横浜市立の小学校なので、横浜市からの嘱託として、一定の報酬をもらって役割を果たすことになる。
なお、通常ならば、PTA会長も学校運営協議会のメンバーに自動的になっている。
先日、今年度1回目の学校運営協議会が開催された。
学校運営協議会は、授業参観の日に合わせて実施されることが多い。
この日は、
授業参観→議論→給食試食会
の流れで実施された。
この日の授業参観。
違和感があった。
参観の授業が「道徳」ばっかりなのだ。
2限と3限が、授業参観だったのだが、どちらかが「道徳」だった。
で、この「道徳」の授業が、非常に興味深く、授業に聞き入ってしまい、
子どもたちの意見に非常に考えされられた。
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その授業では、アンジャッシュのコジマが演じる、
美術館の警備員の心の葛藤が表現されている動画が題材だった。
www2.nhk.or.jp
美術館の警備員であるコジマのもとに、
閉館時間を過ぎた後にやってくる、
年老いたおばあちゃんと、その娘。
コジマは、
「閉館時間を過ぎているため。決まりですから。」
といったんは、入館することを断るのだが、
話を聞くうちに、
展示されている絵画は、そのおばあちゃんの思い出の絵画であること、
おばあちゃんは、今日が一時退院の日で、この先寿命が長くないこと、
などのことが判明してきて。
この2人を入館させてあげた方が良いのか、
でもやはり決まりを守ることが大事なのか、
を猛烈に悩む。
という動画だ。
この動画を見た後、子どもたちは、
「2人を入館されてあげる派」
「やっぱり決まりを守って断る派」
に分かれて、それぞれの意見を出し合う。
・おばあちゃんが可哀そうだから入館させてあげる
・いつ死ぬか分からないくらいのおばあちゃんに、思い出の絵を見てもらえないなんてひどい
・決まりをやぶったら、コジマがクビになっちゃうかもしれないよ
・入館させたら、美術館の悪いうわさが広がって、大変なことになるかもしれない
などなど。
この後、先生は、
「いやぁ、難しいね。じゃぁ今日来ているお父さんお母さんにも相談してみよう!」
という流れ。
そこで出てきた意見は、
・コジマの上司に相談して、特別に入館させるように交渉する
というもの。
ここまで、俺自身も、めちゃくちゃ興味深く授業を受けており。
「この先、どんな授業になるんだろう。」
とワクワクが止まらなかったのだが。
先生は、
「それぞれの立場で、どのような意見があるのか、よく理解できたね。」
「意見を出し合うことで、自分の考えが改められたりもしたね。」
と言い、授業終了のチャイムが鳴った。
俺は、
「え?は?コジマはどうすればいいの?」
「社会にでたら、このような状況で、素早く判断する必要があるんだぜ。」
と、思い、非常にヤキモキした気持ちのまま、授業参観の場を後にした。
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「なぜ、道徳の授業が多かったのか?」
と、
校長に確認すると、
「今年度から、1年のどこかで道徳の授業が問題なく行われているかどうかを保護者に見てもらうこと」
という通達が、横浜市教育委員会から来ているためとのこと。
さらに聞くと、2018年度くらいから「道徳」は、
「教科外活動」だったものが「正式な教科」として位置づけされ、
評価の対象の教科になったということで。
(野党系の政党やリベラル派からだろうと思うが)
国の価値観の押し付けになるのではないか?
という批判が結構あるらしく。
「そんな国の考えを押し付けているような教育はしてないよ」
ということを保護者に見てもらう必要があったようだ。
そもそも道徳が教科になったのは、
・多様性が重視される中、様々な考え方があることを理解できるようになること
・一つの事柄に対して多面的/多角的に捉える力を養うこと
が目的のようだ。
一定理解できるのだけれども。
答えを出さないことが、あえての教育的配慮なのかもしれないが。
コジマの動画を題材とするならば、
「人間が作った『決まり』は、しょせん人間が作ったもので、修正していくことも必要だ。」
という、もうワンステップ踏み込んで欲しかったなというのと、
「多様性を重んじながらも、様々な意見がある中でも、一つの方針を出すというプロセスは社会では必要なんだよ。」
という一種のジレンマを抱えながらも、現時点での最適な運用の一つの解を導き出す努力をして欲しかった。
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「道徳」に代わる教科として、戦前は、
「修身」
という教科が必修科目だった。
この点、興味のある方は調べて欲しいのだが。
「愛国心」「行動規範」を教える教科だったのだが、
軍国主義的なマインドが強すぎるとのことで、
戦後、GHQ指導の下、廃止されることになった。
政治的な思想を全面的に押し出して語ると、
後々、自分自身が血まみれになってしまう危険性もあるので、そこは避けたいと思うが、
少なくとも、今後社会に出たときにぶち当たるであろう道徳的な難題に対して、
答えを導き出すためのプロセスや方法論は、子どものころから教えられると良いのだろうな、
と、そんな気がした。
いずれにしても、大人にとっても興味が持てる授業を繰り広げてくれた、今の教育に、
いくばくかの期待をしたいと思える一日だった。
ちなみに、自分がコジマだったら。
なんとしてでもこの2人に思い出の絵画を見てもらえるように、
どうにか手段を見つける。
もし、怒られちゃったら、ごめんなさいして。
それでも許してもらえないなら警備員やめて、転職するかな。