人生にはモテ期が3回来る、なんて都市伝説がある。
俺のモテ期は、小学校の高学年の時だった。
クラスの女子が19人しかいなかったのに、バレンタインデーでチョコレートを21個もらった。
それ以降、特にモテ期というモテ期がない。
ということは、これから残りの人生で2回もモテ期がくるってことだ。
今から楽しみでしかたがない。
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小学校の高学年の時、俺は良く冷やかされた。
「あいちゃんが、お前のこと好きらしいぜー」
「将来は結婚して、(俺の苗字)+あい だな!」
とか言われて、「あいちゃん」の背中に、
「(俺の苗字)+あい」
と油性マジックで書かれた布テープが貼られたりして、必死にはがしたりしていた。
恥ずかしかった。
俺も「あいちゃん」のことが好きだったから。
そう。
両想いだったんだ。
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小学生の両想いなんて、かわいいもんだ。
交換日記をしたり、昼休みに屋上で話をしたり、放課後にトランプをして遊んだり、小学校の横にある公園を散歩したり。
それだけで、胸がはち切れんばかりのドキドキだった。
小中高一貫校だったうちらは、中学校も一緒だった。
「あいちゃん」は、こう言った。
「こうくん(俺のこと)も一緒にバレーボール部に入ろうよ」
嬉しかった。
俺は、中学に入ったら野球部に入ろうと思っていた。
でも大好きなあいちゃんに言われたこともあり、身長が高くなるかもしれないと思い、バレーボール部に入部した。
バレーボール部は、女子と男子でしっかり明確に分かれていた。
練習を一緒にやることもあまりなかった。
バレーボールをやるのは、人生で初めてだった。
俺も、なんとかこなしていたものの、俺より背が高く、がっしりした「高橋君」が、だんぜん上手だった。
あいちゃんとは、運良く同じクラス。
だが、恥ずかしがり屋だった俺は、あまり「あいちゃん」と会話ができなかった。
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中学2年生になった、穏やかな暖かい太陽の陽が降り注ぐ春のある日。
俺は、掃除当番の理科室の窓から外を眺めていると、正門付近を歩いている「あいちゃん」が手を振っていた。
「あれ?俺に手を振ってくれているのか?」
あたりを見回してみても、俺以外にいなさそうだ。
ボディランゲージとは言え、久々に「あいちゃん」と会話ができると思った俺は、あいちゃんに向かって「おーい」と手を振った。
すると、俺の死角から、「高橋君」が歩いてきて、正門付近の「あいちゃん」に近づいて、合流した。
ちょっと手を繋いでいた。
「え??」
「あいちゃん、俺と両想いじゃなかったのか?」
「高橋君のことが好きなのか?」
一人で手を振っていた自分が、猛烈に恥ずかしくなり、その場にいても立ってもいられなくなり、理科室から逃げ出した。
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「あいちゃん」と「高橋君」は付き合っていたようだった。
俺は、いつの間にかフラれていた。
俺のモテ期は、知らず知らずのうちに終わっていた。
その後、俺は、バレーボールに打ち込んだ。
「ぜってぇに高橋君には負けねぇ」
そして、2年生の終わり頃、俺は、チームのレフトのポジションを勝ち取り、エースアタッカーになった。
「高橋君」もエースだった。
ローテーションで、俺と「高橋君」は対角に位置していた。
勉強も負けたくないと思うようになった。
そしていつしか、クラスで3番くらいに入るくらいの成績が取れるようになった。
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「あいちゃん」
俺が小学校の時に好きだった女の子。
中学校になり同じ部に誘われたものの、いつの間にかフラれていた。
でも、そこでフラれたことで、一気に負けん気に火が付き、バレーボールでエースの座を勝ち取るまでになり、勉強でもトップ争いを繰り広げられるようになった。
バレーボールでジャンプを繰り返していたことが、今の俺のランニングを支えているのかもしれない。
「あいちゃん」
俺は、君に会えて良かったよ。
今でも思い出すんだよ。
穏やかな暖かい太陽の陽が降り注ぐ春が来ると。
一人「おーい」と手を振ったあの日のことを。
俺を成長させてくれた、あの時の気持ちと、あの出来事を。
サブ3を目指す俺に、
「あの素晴らしい『あい』をもう一度」。
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