3か月ぶりに出社した。
通いなれたはずの道路から見える景色は、いつの間にか萌えるような緑にあふれていて、存分に非日常を感じられた。
会社に到着すると、久々にあうリアルな知り合いの顔に、少し戸惑う。
3か月間オンラインミーティングで声だけを聴いていた仲間が、リアルに目の前にいることに、違和感を覚える。
みんな、いくらか太ったようだ。
俺も2kgほど太った。
走ってはいるが、おそらく、27日間連続でビールを飲んでいたことが原因だろう。
「おはようございます」
そんな、他愛もない言葉を対面で発することにも、何となくバツの悪さを感じる。
自分のチームは、これから毎週木曜日に出社するようにしようと決めた。
うちのチームを除くと、他の社員の出社は、2割程度だろうか。
久々の出社だったので、出社しないとできない業務を進める。
仮想デスクトップと比べると、断然にサクサク動作するPCで、作業がはかどる。
やはり在宅勤務では、仕事の効率が落ちていたんだろうな、と思った。
昼休み、お弁当を食べ終わった俺は、手持ち無沙汰に、以前から気になっていた、ダンボールを開けてみた。
自席の引っ越しのときに、持ってきたダンボールだ。
およそ半年前から、ずっと開けていなかったダンボール。
この中には、書籍が入っていた。
しばらくは週末も出かけることはなく、時間もあるだろうから、一度は読んでいる書籍だが、何冊か持って帰ろうと考えて、ダンボールをあさる。
その中で、ひときわ目を引いた本。
たぶん、以前読んだと思うのだが、全く覚えていなかった。
帰宅後。
久々の出社でちょっと疲れたが、アドラーの本を読み始めた。
ビールを飲みながら。
アドラーは、「心理学の父」と呼ばれることはあるが、そこまで有名ではないかもしれない。
ただ、この本に書かれている一つ一つの言葉は、
「なんで俺の気持ちを分かっているんだ?」
と思えるくらいに、自分のすべてを見透かされているようで、人生の指南書の一つとして、本棚にあっても良い内容だと思う。
なるほど。
そうだよな。
こう考えていた自分が恥ずかしい。
こうなりたい。
そんな思いを抱きながら、読み進めた。
この時点で、350ml缶のビールを3杯、飲み干していた。
そんな中で、最も「ガツーン!」と来た言葉を紹介したい。
楽観的であれ。
過去を悔やむのではなく、
未来を不安視するのでもなく、
今現在の「ここ」だけを見るのだ。
そして、以下のように補足している。
過ぎてしまった過去をくよくよと考えるのをやめ、
「未来」を不安視することもなく、
「今現在」できることだけに集中するのです。
悲観的に検証し、
悲観的に準備をし、
その上で肯定的に行動すること。
「今できることだけに集中する」
これは、とてつもなく難しい。
どうしても、今やっていることは、過去に捕われていたり、未来の何かしらの期待に対して行動している気がする。
「俺にとって、今できること」
とは何なのだろうか。
いくら考えても良く分からなかったから、
とりあえず、ビールの缶をプシュっとしてみた。
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