吾輩は犬である。
名前は、おそらく、「ちょこ」だと思う。
何やら、ちょっとお利口なポーズをすると、
「ちょこ、よーし!」
とか言われたり、
散歩に行こうかと誘われるときも、
「ちょこ、お散歩行くよ。」
とか言われる。
だから、たぶん、名前は「ちょこ」なんだろう。
この家に来たのは、3年ほど前だ。
ペットショップなる、狭苦しい檻の中で毎日過ごしていて、毎日のように色々なお客さんに抱っこされては、
「かわいい~」
とか言われていた記憶がある。
その日もいつもと変わらず、トイレシートにおしっこをし、自分の体におしっこが付いた状態で、自分の匂いに安心しながら、眠りについていた。
すると、なんだか、檻の向こう側で、ガラスをビシビシと叩く、女の子3人と父親らしき人がいたんだよ。
少し恐怖に震えていたら、その女の子3人に抱っこされることになり、いつものように、
「かわいい~」
と言われた。
吾輩を抱っこするその手つきが慣れていなさそうで、ドキドキした。
その女の子3人は、翌週もやってきて。
吾輩を抱っこして、そのまま、あの狭い檻に戻ることはなかった。
その日以降、今の家に住んでいることになる。
最初のうちは、好きなところにおしっこやウンチをしていたら、ご主人様にものすごく怒られた。
おしっこやウンチは、ある場所でやらなければいけないと学んだ。
なにやら美味しい匂いがする筒状のものを、ぐちゃぐちゃにしたら、これはこっぴどく怒られた。
どうやら、ゴミ箱とうものらしい。
今でも、美味しい匂いがして、どうしても近づいてクンクンしてしまう。
お風呂という、全身を妙な泡で包まれた上で、ゴシゴシされる儀式がある。
これが、本当にストレスだ。
だが、お風呂が終わると、ドライヤーという温かい風が出る装置で、全身を乾かしてくれて、終わった後に、めちゃくちゃ美味しいおやつがもらえることを学んだ。
だから、お風呂自体は嫌でも、おやつがもらえるから、「お風呂という行事」は、嫌いではない。
「お手」とか「お座り」とか「伏せ」とか言われたときに、やれば良いことも分かった。
そつなくこなせば、あのめちゃくちゃ美味しいおやつがもらえる。
吾輩のちょっと遊んでほしいときにするポーズがある。
ご主人様をはじめ、家族のみんなにアピールするんだ。
ちょっと物欲しげに見えるでしょ。
このポーズをしていると、十中八九、遊んでもらえる。
遊んでいるときは、どうしても興奮して、声が出てしまう。
ご主人様が家に帰ってきたときも、興奮してしまって、どうしても声が出てしまうんだ。
そして、その興奮が冷めやらず、リビングの端から端までダッシュしてしまうんだ。
もう、これだけは、何を言われても、衝動的にやってしまうんだよ。
そして、吾輩の至福の時間は、このソファの上で寝ている時だ。
1日の大半をこのソファの上で過ごしている気がする。
この3年間、この家で過ごせて、非常に幸せを感じている。
*****
仕事なんかで辛いことがあったとき、ふと、ちょこのことを見る。
ソファの上で、安心しきって眠っているその姿を見ると。
娘たちと奥さんたちがたわいもない会話で笑っている姿を見ると。
「あぁ、明日も頑張ろう」
と素直に思える。
自分がしっかりしないとね。
さぁ、明日も頑張ろう。
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