楓子が4月8日に退院してから、約2週間が経った。
日々、少しずつ少しずつ回復してきている。
金曜日。
在宅勤務が終わり、リビングに行き、楓子に聞いてみた。
「楓子、今日、一緒に走ろうか。」
少し嫌そうだった。
自分が病気になる前と比べて、できなくなっていることを確認するのが、嫌なんだ。
普通に元気に過ごしていた11歳の娘。
病気っていうのは、本当に恐ろしいと日々、痛感している。
楓子と立てた目標は、学校が再開するであろう5月6日までに、2kmを走ること。
「走り終わったら、ジュース買ってあげるよ。」
「え?!じゃぁ走る!」
将来に向けた壮大な目標よりも、目先の軽い報酬の方が、人を動かすには良いかもしれないと感じた。
楓子が走るのならと、桜子と璃子も一緒に走ると。
ついでに、奥さんも付いてくると。
金曜日の夕刻、家族全員で、家の周りを走ることになった。
家の周りは、1周250m。
桜子と璃子は、約2km。
奥さんは、100mくらいか。
楓子は、桜子と手を繋ぎながら、1km走った。
ここまできたか。
ベッドの上で、寝たきりの状態が数週間続いていた楓子が、1kmも走れるようになってくれた。
なんという達成感。
自分は何もしていないのに。
ここ数か月の苦しさが半端なかったので、今はどんな些細なことにも幸せを感じられる。
コロナ禍の中、楓子の回復を実感しながら、家族みんなと一緒に走れる俺は、最高に幸せ者なのかもしれない。
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