神奈川マラソンのスタート前。
ランナーたちが着替え終わっていた陣地に、
あのおじさんが現れた。
ランナーたちは、荷物を預け始め、スタート位置に移動を始めようとしている頃だった。
このおじさんとは、数日前に五反田でお酒の席をご一緒させていただいた。
そして、
「神奈川マラソンを走るけど、こっそり行って、こっそり帰る。」
と、おっしゃっていた。
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陣地に現れたおじさんに、
「あ!ちゃんと来てくれたんですね!」
と、興奮気味にご挨拶。
一方、おじさんは、反応が薄かった。
この日のおじさんは、お酒の席と同じ人間とは思えないくらい顔の表情が曇っていた。
オデコには、「不安」とはっきりと油性マジックで書かれていた。
人間はこれほどまでに気持ちで表情が変わるんだな、という新しい発見。
「どうしたんですか?いつもと顔が全然違いますよ。」
「いや、ハーフの距離を走れるのか不安しかないんすよ。」
と、おじさん。
まじで不安そうだった。
言葉少なめだった。
なんか、色々と挙動不審だった。
聞くところによると、1月13日の5kmのレース以降、約3週間、1ミクロンも走っていないらしい。
着替えるスピードも心なしか、めちゃくちゃ遅い。
おじさんがなかなか着替え終わらなかったので、俺はしびれを切らしてしまって、先にスタートの整列に向かってしまった。
スタート地点に向かい、レースが始まると、おじさんのことは完全に頭の中になかった。
自分の走りに集中していた。
だが、この神奈川マラソン、折り返しが多く、3回ほどスライドのチャンスがある。
お知り合いのランナーとスライドして声を掛け合う。
そこで、思い出したレース前のおじさんの不安そうな顔。
「あのおじさんは、ちゃんと走れているのだろうか。」
少し気になり、反対車線を走るランナーをしばらく探してみるも見つからず。
結局、おじさんをレース中に見つけられなかった。
「もしかして、DNF…?」
そんなことが頭をよぎった。
*****
ゴール後、陣地で着替えていると、陣地に近づいてくるお2人。
ユキさんとおじさんだった。
おじさんのウォーキングフォームは雄大で美しかった。
オデコには、マジックで「完走したぜ!」と書かれていた。
よかった。
「おつかれさまです!」
と、声をかけた。
「あ、みなさん、もう手荷物取ってきましたか?」
と、おじさんの表情は晴れやかだった。
その後、手荷物を取りに行ったこのおじさんは、ティアー的なものを一人流していたようだった。
着替えをしているときは、ものすごく饒舌になっていた。
スタート前との変貌ぷりに、若干の面倒くささを感じたが、おじさんが楽しそうだったので、突っ込むことをやめた。
*****
アフターは、こちらのメンバー。
お2人のヨガインストラクター。
※神奈川マラソンで100分カットした聖母マリアは、「写真撮るんなら、可愛く撮ってちょうだいよ!」と圧をかけてきた。
おじさんと、寡黙なハンサムと、俺。
おじさんは、ハーフを完走できたことに加えて、チャーシュー麺とビールでかなり満足そうだった。
かなり饒舌だった。
ランナー4人は、おじさんの話に夢中だった。
やはり、このおじさんの話は面白い。
すると、ダビデ像並みの美しい肉体を持つヨガインストラクターは、こんなことをしゃべり始めた。
「これから、キクチさんのこと、持ち上げちゃっていいですか?」
ダビデ像の発言に興味津々の、
ランナー3人とおじさん1人。
「back numberの『高嶺の花子さん』って曲知ってますか?」
ランナー3人は知っていたが、おじさんは知らなかった。
おじさんは、流行りの音楽には興味を持っていないようだ。
「『高嶺の花子さん』の歌詞、なんかキクチさんのブログの言い回しと似ていると思うんですよ。」
ダビデ像は、そう言った。
「高嶺の花子さん」の詩を音読するランナーたち。
ダビデ像は、
「そうそう!そこ、めちゃくちゃキクチさんぽくないですか?」
と、興奮気味だった。
正直、俺には、あまり分からなかった。
おじさんは、むずがゆそうな顔をしているものの、嬉しそうだった。
今後、back numberの曲を聴くたびに、おじさんの顔が浮かんでくることになってしまったじゃないか。
back numberとともに思い浮かぶ顔は、この顔じゃないよな。
こんな顔や、
こんな顔であって欲しいものだ。
おじさん、神奈川マラソン、完走おめでとうございます。
逆回転していた時計は、もとの回転に戻ったかな?
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