10時40分。
20分休みが終わり授業が始まった。
そのとき、クラス中のみんなは、中里さんと古川さんの動向に注目していた。
「あの2人、大丈夫なのか?」
「このままだと、『こっくりさん』に憑りつかれてしまうんじゃないのか?」
中里さんと古川さんが、20分休みの時間を利用して始めた「こっくりさん」が、帰ってくれないのだ。
「こっくりさん、こっくりさん、帰って下さい。」
と2人は、小声で繰り返している。
紙の上を動く10円玉は、「いいえ」の方に動く。
2人とも泣きそうな顔をしながら必死だった。
そして、とうとう先生に気付かれてしまった。
「なにをやってるんだ!!」
と、その拍子に、2人は10円玉から指を離してしまい、泣き始めた。
この事件をきっかけに、うちのクラスで「こっくりさん」をやることは禁止された。
こっくりさん
ja.wikipedia.org
*****
俺が小学校4年生くらいの頃、「こっくりさん」が猛烈に流行っていた。
休み時間には、「こっくりさん」の10円玉が異様に速く動く女子5名ほどの周りには、いつも人だかりができていた。
俺もみんなとたがわず、見学させてもらっていた。
「こっくりさん、こっくりさん、〇〇君の好きな人を教えてください。」
みたいな質問がされるのを、みんな固唾を飲みながら待っていた。
俺が想いを寄せていた、「あいちゃん」も、10円玉が超絶速く動く女子の一人だった。
www.all-out-running.com
ある日の昼休み、あいちゃんの周りに人だかりができていた。
ほとんどの見学者は、女子だった。
俺は、こっそり少し離れたところから様子を伺っていた。
友達と話をしながらも、固唾を飲みながら、こっそりとあの質問が来るのを待っていた。
「こっくりさん、こっくりさん、あいの好きな人は誰ですか」
き、きたっっ!!
「えーーー!やめてよーーー!」
あいちゃんは、恥ずかしそうだ。
俺の位置からでは、10円玉の動きは見えない。
女子たちは、こそこそしながら、10円玉の動向に注視している。
「ぜ」
「ん」
。。。
「えー!!やっぱり、そうだったのー??」
と女子の群集が騒ぐ。
「え?え?『ぜんりょく』だったのか??」
俺の心も騒ぐ。
そして、その群集の目が、俺に集まった。
「え?なに?」
ととぼけてみた。
嬉しかった。
*****
「こっくりさん、こっくりさん、どうぞおいでください。もしおいでになられましたら『はい』へお進みください。」
俺と男の友達2人、合わせて3人で、10円玉の上に指を置き、そう発した。
「絶対に自分の意思で動かさないこと」
を男3人で約束して。
「こっくりさんなんて、どうせ10円玉を押さえている誰かが動かしているだけだろ」って俺は思っていた。
ただ、「憑りつかれることがある」という噂により、自分がやってみるのは、怖かった。
そんな俺は、あいちゃんに指導してもらいながら、「初こっくりさん」してみた。
「こっくりさん、こっくりさん、どうぞおいでください。」
「こっくりさん、こっくりさん、どうぞおいでください。」
「こっくりさん、こっくりさん、どうぞおいでください。」
全然動かねぇ。。。
「こっくりさん、こっくりさん、どうぞおいでください。」
1ミリたりとも動かねぇ。。。
「あれ?全然来てくれないね。。。」
あいちゃんの顔を確認する。
なんか、動揺していた。
「これはまずい。」
そう思った俺は、10円玉を「はい」の方に動かした。
「あ、こっくりさん、来たっ!」
あいちゃんは、笑顔になった。
ほっとした。
俺は、あいちゃんの笑顔欲しさに、男同士の約束を破ってしまった。
なんか、そんな、ほろ苦い俺の思い出。
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