ランナーであれば、誰もが経験したことがあるのではないだろうか。
「足攣り(筋痙攣)」
レースの最中、レース後に靴下を脱ごうとしたとき、沢山練習した日の夜中、飲み過ぎた日の夜中、などなど。
ふくらはぎ、お尻、足の指などなど、俺は様々な部位で攣った経験がある。
昨日、仕事終わりに20kmのペース走をやってみたのだが、15km過ぎから、ふくらはぎに足を攣りそうな予兆が現れ、18km付近で一度ストレッチをして、なんとか20km走り切れた。
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練習ならまだ良いが、レース中に足を攣るか否かは、ランナーにとって死活問題だ。
これからレースシーズンを迎えるにあたり、足を攣ってしまう原因と、その治療方法と予防方法の最新の見解を論文をもとにまとめてみた。
今回参考にした論文は、2017年3月に発表されたこちらの論文で、全81本の論文を参考にまとめたものだ。
"Exercise Associated Muscle Cramps - A Current Perspective"
「運動に起因した筋痙攣 -最新の見解ー」
足を攣る原因
筋肉が攣ってしまう原因は、複数の要因が絡み合って起こる。
要因としては、
・運動強度の上昇
・運動継続時間の増加
・筋肉のエネルギー減少
・暑さや高湿度
・調整不足および暑熱馴化不足
が挙げられており、これらの複合的に作用して、筋肉の疲れとなる。
筋肉が疲れると、筋肉の伸び縮みをセンシングする「筋紡錘」と
腱の伸び縮みをセンシングする「腱紡錘(ゴルジ腱器官)」が
相反する信号を脊髄に送ることで、反射として、筋肉の痙攣(攣ること)が起きるとのことだ。
筋紡錘、腱紡錘(ゴルジ腱器官)については、上記論文のFigure 3に図があったので、そちらを見てみると概念的に理解ができる。
こちらを図にすると以下の通り。
※上記論文のFiture 4から再構成
複合的な要因で起こる「筋肉の疲れ」をいかに防ぐか、が重要ということになる。
筋痙攣の治療方法
様々な要因が重なって筋痙攣が起きる。
過去、様々な治療方法が巷では紹介されていたが、最新の見解はどうなっているのだろうか。
論文内では、過去に以下のような治療方法があったと記載があった。
筋痙攣が起きている部分のストレッチ
温める
冷やす
スポーツドリンクを飲む
塩分や電解質を取る
ピックルジュースを飲む
点滴を静脈に打つ
経皮的抹消神経電気刺激
様々な要因の結果として筋痙攣が起こるため、それぞれの人や状況によって効果的な治療方法は、それぞれ違うとのこと。
が、共通的に筋痙攣を治療可能な方法が紹介されていた。
塩分を摂取する
汗を掻くことによる電解質のバランスの損失に対しては、塩分を多く含み糖質も含むドリンクを飲むことが重要になる。
そのようなドリンクは飲んでから、体内で使われるまでに13分程度かかると言う報告がある。
3-6g/L程度の塩分濃度が良いとのこと。
これだけの塩分濃度のドリンクはなかなかないが、経口補水液は、その濃度に近い。
経口補水液のOS-1で、2.92g/Lの塩分。
ポカリスエットで、0.49g/Lの塩分。
マラソン大会のエイドでは、ポカリスエットが置かれている大会もあるが、それよりも経口補水液の方が効果がありそうだ。
レースでは、定期的に塩分が含まれるドリンクをしっかり補給すると良い。
患部のストレッチ
患部のストレッチは効くとの記載があった。
腱紡錘(ゴルジ腱器官)を刺激することで、筋紡錘とのアンバランスを解消でき、結果、筋肉に対する運動指令が正常化するとのことだ。
患部の筋肉だけではなく、拮抗筋、ならびに左右逆側のストレッチも行うことで、全体的なバランスが取れて、治療に役立つ。
その他の治療方法
ショウガ、マスタード、シナモンは電解質の補助にはならないが、神経伝達に対して効果があるようだ。
俺はピックルジュースというものを知らなかったが、ピックルジュースは効果はないらしい。
また、マグネシウムの摂取は効果がある。
補給のゼリーとして、マグオンは効果がありそうだ。
筋痙攣の予防方法
日々の塩分摂取
運動中は、汗の掻き過ぎに注意が必要とのこと。
体重の2%が減ると危険だ。
運動の1時間前からスポーツドリンクなどを飲むと良い。
汗っかきの人は、日々、5-10g/day程度の塩分を余計に摂取するとよい。
厚生省によると、成人男性は、8g/day程度の塩分摂取が適正らしいが、汗っかきで普段から運動を多くする人であれば、13-18g/day程度の塩分摂取があると良い。
継続的な持久トレーニング
日々、持久的なトレーニングをすると良い。
と記載があったが、ランナーにとっては、あまりに当たり前すぎることだ。
レース相当の強度を普段から継続的に練習で取り入れることで、足を攣る可能性を低減できる。
プライオメトリックストレーニングを取り入れる
筋肉の疲れるタイミングを遅らせることは重要だ。
これにはプライオメトリックスが効果的と記載があった。
ランニングエコノミー向上にも寄与するため、プライオメトリックスは取り入れた方が良いことは、当ブログでも以前に紹介している。
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その他の予防方法
そのほか、エビデンスがはっきりしないものとしては、
・姿勢の矯正
・日常的なストレッチング
・適度なウォームアップ
・レース前のマッサージセラピー
・コンプレッションインナーの装着
・シューズなどの適切な装備
があげられていた。
筋痙攣に対して気を付ける点
論文の最後に、まとめとして、気を付ける点が複数紹介されていた。
・実力相当の力をレースで出すこと(過信しない)
・湿度、温度、室内/屋外、高度、地形の影響を知ること
・過去に筋痙攣が起きた状況を記憶しておくこと
・筋痙攣の予兆を早くとらえること
・ふくらはぎ、お尻の伸び縮みに意識して、急激なストライドの変化や伸びを起こさないこと
・汗を掻いたら、塩分をしっかり取ること
・塩タブや塩ピルは手軽な予防
・適切な糖分補給も筋肉の疲れを遅らせられる
・プライオメトリックスをトレーニングに取り入れること
・筋痙攣を起こした筋肉とその反対側の筋肉(拮抗筋)もストレッチすること
まとめ
足を攣らずに、レースを完走する。
「足を攣らないこと」は、目標タイムをクリアするための最低条件だ。
レース前の補給。
レース中の補給。
これらを怠らないことが重要だ。
また、攣りそうになったら/攣ってしまったら、しっかりとストレッチ。
塩分と水分を補給してから、走り出す。
練習の成果をしっかりとレースで出すためには、レースマネージメントも重要になってくる。
練習をすることは当然ではあるが、レースマネージメントもしっかり行い、自分の目標を達成したいと思う。
いつもありがとうございます!
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