俺には、4つ下の弟がいる。
俺が長男。2人兄弟だ。
子どもの頃、俺は小中高と電車通学だったので、近所に友達がいなかった。
遊ぶときは、いつも弟の友達たちと。
遊ぶとなると、弟が一緒。
いつも一緒にいるので、喧嘩することも多かった。
喧嘩の原因は、思い出せないほど些細なこと。
弟が原因のこともあったし、俺が原因なこともあった。
でも、喧嘩した時、怒られるのは必ず俺だった。
「お前は、長男なんだから、弟がしたことも全部お前が責任を取らなきゃいけないんだぞ。」
昔気質のうちの父親の言葉だ。
父親は、3人兄弟(父/長女/次男)の長男だ。
兄弟喧嘩をすると、俺の父親のお父さん(俺のおじいちゃん)に、怒られるのは必ず長男である父親で、大きな右の手のひらで引っ叩かれた。
そして、すげー吹っ飛んでた。
という話をもう何100回も聞かされたことがある。
そのおじいちゃんの教えを忠実に受け付いだ父親は、兄弟喧嘩となれば、必ず俺を叱っていた。
子どもながらに、理不尽さを感じていた。
怒られて泣いていると、母親は、そんな状況を見て、
「悪いのが弟だったとしても、あなたにも少しは原因がないか、考えてごらん。」とか。
「今回は、あなたは全く悪くないね。でもお父さんは、あんなんだから。。。後で弟を叱っておくからね。」とか。
声を掛けてくれて、俺の気持ちの平静は保たれていた。
だが、「弟が悪いのに、どうしていつも俺ばっかり。。。」みたいな気持ちは、常に持っていた。
そんな俺は、裏でこそこそ、弟に仕返しをしていた。
うちの家は、あまり広くなかったため、弟と俺は「子ども部屋」で1つの部屋。
子ども部屋には、机が2つ、そして二段ベッド。
小学生の頃からずっと野球を続けていた弟は、いつも疲れていて、俺よりも早く寝ていた。
俺は机で勉強。
弟は二段ベッドで就寝。
そんなタイミングが来るたびに、俺は少しワクワクしていた。
お腹がグルグルしてくると、俺はおもむろに卒業証書の筒を取り出す。
こんなやつね。↓
この筒の蓋を取って、そこに思いっきり臭い屁をこく。
そして、蓋をしめて、時を待つ。
弟が、最高に気持ちよく熟睡しきっているタイミングを、ひたすら待つ。
そのときの気分の高揚と言ったら、言葉に表せないほどだ。
もちろん、勉強どころの騒ぎではない。
「よし、今だ。」
筒の蓋を開け、弟の鼻の近くに持っていく。
筒から顔を背けている俺でも分かる、その臭さ。
だが、弟は微動だにしない。
「なぜだ?」
こんなに臭いのに。
ふと、弟は「うーん。。。」とか言いながら、寝返りを打つ。
あぶねぇ。。。
このとき、弟を起こしたいのか、起こしたくないのか、そのあたりは良く分からないが、とにかく、すごい緊張感だった。
夏場になると、「蚊」を装った仕返しもしていた。
弟の寝床に落ちている、少し硬めのほどよい長さの髪の毛を探す。
ちなみに弟は、俺よりも剛毛だ。
そして、おでこも狭い。
高校生の時、あだ名が「デコセマ」になって、真剣におでこの髪の毛を剃るかどうか悩んでいた。
ほどよい髪の毛が見つかると、俺は「蚊」になりきる。
鼻にかけた声で、
「ん~~~。。。」
と耳元に「蚊」が飛んできたかのような音を模擬する。
そして、耳の穴に髪の毛を突っ込む。
弟は、本当の蚊だと信じて、「ん、ん、、」とか言いながら、耳元を手で払う。
弟を完全に起こしてしまって、俺のイタズラだとバレてしまっては、俺の負けが決まる。
起きるか起きないかの際どいラインでの攻防戦だ。
耳の穴だけでは、飽き足らず、「ん~~~。。。」と「蚊」を演じながら、今度は鼻の穴を攻める。
「すっ、すっー」鼻息を少し強めにして、鼻の穴をかゆがる弟。
まさにギリギリの攻防だ。
「どうだ。昼間、お前が悪いことしたのに、俺が怒られた仕返しだぞ。」
ぞんぶんに俺の仕返しを受けるがいい!
そんな絶好のタイミングに、お腹がグルグルしてきた。
いつでも取り出せるように、机の横にセットした卒業証書の筒を取り出す。
蓋を開けるときに、勢いよく開けると「ぽんっ!」と鳴ってしまうので、慎重に開けなければならない。
そして、史上最強に臭い屁を筒に充満させる。
悪いのは、お前だからなっ!
そう思いながら、勢いよく、弟の鼻の近くに筒を放つ。
「く、くせっ!!」
「なんだよー、やめろよー!」
や、やばい。
起こしてしまった。
でも、超おもしれー!!
「お父さーん。お兄ちゃんがオナラかがせて、寝るの邪魔してくるんだけど!」
俺は、弟の口を押えようとする。
やめろやめろ!と思いながら、「しーっ!」のポーズをする。
でも、父親にバレる。
「こらっ!お前は~。ちょっとこいっ!!」
そして、結局また、俺は怒られるのだ。
うちの一家が集まると、こんなエピソードを酒の肴にして楽しく飲んでいる。
このエピソードも何100回も登場している。
家族で集まり、たわいもない話で盛り上がる。
そんな仲良しなうちの家族、俺は大好きだ。
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