入社して間もないころ、同期4人で良く飲みに行っていた。
その4人では、3回ほど海外旅行にも行った。
いわゆる悪友ってやつだ。
今では、毎年、日程を合わせて人間ドックに一緒に行く仲だ。
あの頃、お酒の席では、
「長い人生、何を目指して生きていくのか」
みたいな議論が、しばしば行われていた。
結論としては、
「ナイスミドルになることを目指す」
ということだった。
簡単に言うと、おっさんになってもモテたいって思ってたってことっす。
ナイスミドル。
いまいち、定義がはっきりしない。
その定義があやふやな、「ナイスミドル」。
俺たち4人は、その後、あやふやな「ナイスミドル」を目指して生きることになる。
タバコを吸うとき、
「ナイスミドルは、こう火をつけるはずだ。」
みたいな感じで、ジッポをおしゃれに点ける技を練習したりした。
オイル交換が面倒で、100円ライターを使うようになった。
「ナイスミドルは、葉巻を吸うはずだ。」
と、葉巻を購入し、喫茶店のルノアールで、葉巻に火をつけてみたりした。
吸い方が良く分からず、葉巻を片付け、紙たばこを吸った。
「ナイスミドルは、ラーメンにコショウを入れないだろう。」
「いや、コショウくらい入れてもいいだろ。」
みたいな。
「ナイスミドルは、爪楊枝は使わない。」
「歯に食べ物が詰まっていたとしても、詰まっていないフリを美しくできるはずだ。」
「ナイスミドルは、ざるそばは、最初はそばのみで食べる。」
「ナイスミドルは、歯が白い。」
「常にいい匂い。」
「わちゃわちゃしないし、常にクール。」
「ヒゲは必須。」
「パリッとしたスーツを着こなしている。」
とか。
アメックスのプラチナカードを持つための条件を調べたりもした。
ちなみにブラックカードなら、カードで戦車も買えるというのは、ただの噂だ。
「ナイスミドルは、スポーツカーに乗っている。」
と、冬のボーナスを頭金に、「スカイラインR34 GT-T」を購入して、横須賀の海岸線を走りまくった。
ハイオクだったし、燃費が悪すぎたし、ナイスミドルになるにはお金がかかることが分かった。
「ナイスミドルは、高級な腕時計をしている。」
と言って、ロレックスのデイトナの値段を調べて、驚愕した。
「ナイスミドルは、バーバリーのコートを着ている。」
と、バーバリーにコートを試着しに行った。
高すぎて買わなかった。
「ナイスミドルは、東急田園都市線沿線に住んでいるはずだ。」
と、住むところまでも、定義があいまいな「ナイスミドル」を前提に検討していた。
なぜ東急田園都市線沿線だけが、あんなに高いのか、さっぱり分からなかった。
定義があいまいな「ナイスミドル」を想像し、憧れ、そこに向かって生きていた。
「ナイスミドル」
かっこよさと思慮深さとを兼ね備えた中年男性。
ということだ。
やはりあいまいだ。
そもそも、「思慮深さ」って何なんだ?
41歳の俺も、中年男性だ。
26歳の「ナイスミドル」に憧れを抱いて、「ナイスミドル」を目指していた、若き頃の俺よ。
15年経った今の俺は、「ナイスミドル」になれてるかい?
先日、久々にその同期に会った。
その同期は、俺にこう言った。
「お前、なんか白髪増えたな。」
老いたことを指摘された。
そして、
「でも、その白髪の生え方、ナイスミドルっぽいぞ。」
って。
なんだか嬉しくなって、それ以降、俺は白髪染めをしなくなった。
41歳、中年男性。
白髪の生え方以外の部分でも、ナイスミドルになれるように努力したいと思う。
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