「走るのが速い人は、体が硬い人が多い」という都市伝説がある。
半年ほど前の「アスリートヨガ道場」にて、俺はその都市伝説を目の当たりにした。
www.all-out-running.com
ときおり目にする、「走るの早い人 = 体が硬い」説について、学術的にはどのような見解なのか、調べてみることにした。
桐生祥秀選手の足首は超絶硬いらしい
まず見つけたのが、こちらの記事だ。
全文表示 | 9秒98桐生祥秀、足首の「硬さ」が大記録達成の武器になった : J-CASTニュース
「足首が硬いと『床反力』、つまり地面から受ける反発力が大きくなり、うまく活用できれば前方への推進力につながります。筋力と床反力の両方でスピードアップができるのです」
足首が硬いことで、力を効率よく利用でき、速く走れるとのことだ。
一方、その硬さが原因でケガをするリスクが高まるようだ。
リスクもあり、「スピードは出やすくなりますが、あまり固すぎるとそれだけ大きな負荷がかかり、ケガをしやすくなる一因になり得ます。
ちなみに、足首が硬いかどうかは、和式便所でちゃんと座れるかどうかで判断ができるという。
和式便所なんて、俺の生活の中で遭遇することなんて、ほぼないけどな。。。
あ!
マラソン大会のトイレ、和式便所が多いな!!
もしかしたら、速いランナーは、スタート前の脱糞で苦労しているのかもしれない。
ちなみに俺は、レースの日は、すべて自宅で出し切るようにしているので、問題ない。
いや、そんなに速く走れないから、足首が柔らかいし、どちらにしても問題ない。
体が硬い、体が柔らかいとは?
「体が硬い/柔らかい」とは、どういう状態なのだろうか。
調べてみると、3つの因子が挙げられそうだ。
・関節可動域(Range of Motion)
・筋スティフネス/腱スティフネス
・筋硬度
関節可動域
関節可動域とは、関節の動く範囲のことを言う。
一般的に、「体が硬い/柔らかい」というのは、この関節可動域が「小さい/大きい」ということにあたるだろう。
立位体前屈をやったときに、手のひらをビターっとつける人は、関節可動域が大きく、「体が柔らかい」ということだ。
筋スティフネス/腱スティフネス
筋スティフネス/腱スティフネスとは、筋肉や腱のバネとしての強さを表す。
バネとして強いほうが、変位が少なくても大きな力を発揮できる。
スティフネスが高いと、関節可動域が小さく
→体が硬い
スティフネスが小さいと、関節可動域が大きい、
→体が柔らかい
という傾向があることは、多くの論文で明らかになっている。
筋硬度
筋硬度とは、筋硬度計という測定器を使って測定ができる。
一定の力で筋肉を押した場合に、どれだけ筋肉がへっこむか、を測定することで測定する。
筋肉が疲れると、筋硬度が高くなることが分かっている。
筋肉が疲れて、筋肉内に老廃物が溜まることにより、血流量が増え、筋肉内の圧力が高くなり、硬い筋肉になる。
筋硬度は、いわゆる体の硬さと直接は関係がなさそうだ。
体が硬いとは
まとめると、
体が硬いということは、
関節可動域が小さく、
筋スティフネス/腱スティフネスが高い、
と言える。
※まとめるにあたり参考にした論文は以下の論文だ。
足の速さと体の硬さの関係
一般的に、スティフネの低下は可動域拡大に繋がる一方でパフォーマンスを低下させるといわれている。
100m疾走中の動作を調べたこちらの論文では、
足関節の動作について、
「速いランナーほど、接地時の足関節の変位が小さい」と報告している。
すなわち、速いランナーは、接地のタイミングで、足首を硬くして、地面からの反力を効率的に使えていると考えられる。
この点は、桐生選手の記事で書かれていたことと一致する。
また、持久走ランナーについて調べたこちらの論文を紹介したい。
”Potential Relationship between Passive Plantar Flexor Stiffness and Running Performance”
足首を曲げ伸ばしする際の筋肉である「足底屈筋群」のスティフネスと、足の速さについて調査している論文だ。
スティフネス は、関節を曲げていったときの、関節が発揮する受動的なトルクを測定される。
関節が発揮する受動的なトルクが大きい(正確には角度変化に対するトルク変化量が大きい)方が、スティフネス が高い。
足底屈筋群のスティフネスを、持久走ランナーと、トレーニングしていない一般の人を比較した場合、
持久走ランナーの方がスティフネスが高いことが分かる。
また、ランナーを速いグループと遅いグループに分けて比較したところ、速いランナー群のほうが、
スティフネスが高いことが分かった。
すなわち、「足が速い = 足底屈筋群のスティフネスが高い」ということは確実そうだ。
さらにこの論文の中では、5000m走のベストタイムが速い人ほど、足底屈筋群のスティフネスが高いことも報告されている。
なお、「足底屈筋群のスティフネスが高い = 足関節の可動域が小さい」かどうかは、この論文には明記されてはいないものの、一般的には
スティフネス高い = 可動域が小さい
なので、「足が速い = 足首が硬い」と言って問題ないと考えられる。
こちらのキプチョゲ選手がジョグとストレッチをしている動画、8分過ぎから伸脚をするキプチョゲが映っているが、
後ろに倒れそうになっており、足首が硬そうなことが伺える。
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こちらのファラー選手のウォームアップの動画では、股関節周りのストレッチが多く、足首を直接伸ばすようなストレッチがない。
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まとめ
走るのが速い人は、足首が硬い(足底屈筋群のスティフネスが高い)ことが分かった。
走るのが速い人は、体全体が硬いかというと、ファラーのウォームアップ動画を見ている限りは、そんなこともなさそうだ。
では、足首が柔らかい人は、速く走れないかと言うと、そうではないと思う。
走る動作は、足首も含めた全身運動あり、局所的に足首の硬さだけで結論を出してしまうのはナンセンスだと思う。
足首が柔らかいからと言って、マラソンを速く走ることを諦める必要はない。
ちなみに、これは完全に私見だが、ヨガのスカーサナで、尖がっている方々は、股関節周りのストレッチを継続するともっともっと速く走れるのではないかと思う。
あ、足首が硬いからといって、速く走れるわけではないので、そこは気を付けてね。
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