大学生の時、お台場に向かう「ゆりかもめ」に乗車する中、友人たちと談笑しながらも、俺は冷房の風が自分に直接当たるところを探していた。
「このままではヤバいことになる」
「なんとかこの変色を止めなければ」
ゆりかもめは、空中に設置された線路を走り、周囲に建物が少ないため日影が少なく、窓ガラスも大きくブラインドが付いていないため、真夏の車内は灼熱地獄となる。
真夏で最高気温35度を超える日だというのに、俺は買ったばかりのちょっとおしゃれな水色のコットン生地のTシャツを着ていた。
既に俺の水色のTシャツは、背中あたりから少しずつ濃い青色に変色し始めていたのだ。
肩掛けカバンにより、右肩あたりも肩掛けをなぞるように濃い青色に変色している。
このままでは、お台場に到着しておしゃれなレストランに入ったときに、
水色に濃い青色のランダムな模様があしらわれている変なTシャツを着ていることがバレてしまう。
いや、
「俺がすげー汗っかきだ」
ということがバレてしまう。
*****
社会人になった頃、真夏の新宿で俺は彼女とデートをしていた。
ただでさえ暑いのに、アスファルトの照り返しが強く、俺が着ているグレーのポロシャツの色は、濃いグレーへと変色し始めていた。
ときおり店舗の入り口から吹き出している冷房で冷やされた空気が心地いい。
だが、そんなちょっとした冷えた空気くらいでは、俺のポロシャツの変色を食い止めることはできなかった。
彼女には「俺が汗っかきであること」は伝えており、共有済みだったので、ポロシャツの変色について、彼女はあまり気にしている様子はなかった。
ただ、俺は新宿を歩く他の人からの視線が気になってしかたがなかった。
*****
30度を超える最高気温の日の出勤は、慎重にならざるを得ない。
最寄りの駅までダッシュなんかしてしまったら、ホームで電車を待っている間に、すごい勢いで汗が噴き出してくる。
俺は「弱冷房車」に乗ってはいけないことを知っている。
「40歳を越えた汗だくのオッサン」
これは、通勤ラッシュの中では、凶器に値するからだ。
だから俺は、暑くなると、朝起きる時間を少し早めるようにしている。
最寄りの駅まで汗をかかないように
「そろり そろり」
と移動するためだ。
*****
せっかく少し早く帰れたから、今日は疲労抜きジョグしてこようかな。
なんて感じで、気持ち良い汗を掻きにジョグにでかけることがある。
だが、俺の汗の量は、疲労抜きジョグであろうが、半端ない。
最近の疲労抜きジョグは、敢えて坂道を走るようにしているものの、キロ7で心拍数は低めで推移している。
これくらいの低強度のジョグだったとしても、汗だく過ぎて、ビビった。
あまりにもビチョビチョだったため、自宅前でノースリーブのシャツを脱ぎ、
シャツを絞ると、缶コーヒー1杯分はあろうかと言うくらい、しっかりと汗が絞れた。
ランパンからは、お漏らしをしているかのような、汗のしたたり具合だった。
*****
俺が「汗っかきかもしれない」と感じ始めたのは、大学生くらいからだった。
友達と集まって外で遊んだり、彼女と街中でデートをするようになった頃だった。
「運動することが少なくなったから、汗っかきになったんだろう」
と思っていた。
ランニングを再開して、日々体を動かすことが多くなったので、
「ちょっとくらいの運動では汗をかかないようになったはずだ」
と思っていた。
だが、俺は相変わらず汗っかきだ。
いや、むしろ、より汗っかき度が増していると思う。
どうやら、日々トレーニングを行い体を動かすようになると、より汗っかきになるらしい。
以前にも調査した記事。
そして、こちらの論文にも
アスリートは運動中に、より早く、またより多く発汗するようになり、それが蒸発による放熱を促進しUHS(調整不可能な熱ストレス UHS:uncompensable heat stress)の危険性を低下させる。
こちらの論文にも
"人の体温調節反応"
身体の調節機能はランニングなどの持久性トレーニングによって改善されることが知られている。
※ここでいう「改善」は、より発汗感受性が高くなること
このままでは、俺は、汗っかきになる一方だ。
だから、俺は決めた。
「通勤などで外を歩く場合は、とにかく『そろり』する。」
なるべく「そろり」すれば、汗の量は最小限に抑えられる。
「シャツが変色し始めたら、1kmほど全力で走り、シャツ全てを変色させる。」
まだらな変色だから恥ずかしいのだ。
もともと濃い青色のTシャツだったかのように、
もともと濃いグレーのポロシャツだったかのように、
しっかり全部、変色させてしまえば良いのだ。
夏は大好きな季節ではあるが、汗はかきたくない。
そんなときは、「そろり」で被害を最小限にとどめるんだ。
万が一、汗をかいたら、全力で汗をかけばいいんだ。
恥ずかしいことは何もない。
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