短い時間の中、いかにトレーニングの質を上げるか。
それは、アスリートでなくとも、スポーツに取り組む方であれば、考えたことがある命題だろう。
この命題の答えを探し求めて約半年。
見つけてしまったかもしれない。
「ウィンゲート式インターバル(Wingate based High Intensity Interval Training)」だ。
または、「スプリントインターバルトレーニング(Sprint Interval Training:SIT)」と呼ばれている。
時間効率の高い練習方法を長年研究しているMartin J. Gibala教授が執筆した論文は、その多くが「ウィンゲート式インターバル」について書かれており、多くの論文に引用されている。
本日は、Martin J. Gibala教授の論文を元に、時間効率が非常に高いインターバルトレーニングである、「ウィンゲート式インターバル」について、紹介したいと思う。
訳すと「短い期間のスプリントインターバルと従来の持久的トレーニング:骨格筋と運動パフォーマンスへの初期の適応の類似点」だ。
スプリントインターバルトレーニングの効果について、しっかり記述されており、1000件を超える引用をされている権威ある論文だ。
ウィンゲート式インターバルとは
ウィンゲート式インターバルとは、「スプリントインターバルトレーニング(SIT)」という呼ばれ方でご存知の方もいるかもしれない。
「ウィンゲート式」は、イスラエルにある「Wingate Institute」にて開発された「ウィンゲートテスト」を元にしているという意味だ。
ウィンゲートテストとは、自転車などのエルゴメータにて、30秒間で全力を出し切ることで、その最大出力や出力の傾きなどから、運動適応能力を測定するためのパフォーマンステストだ。
ウィンゲート式インターバルは、
・30秒で疲れ果てるように全力を出し切る
・4分間のレスト
これを4本から6本繰り返すインターバルトレーニングだ。
論文内では、自転車のエルゴメータでのトレーニングで実験していたが、ランニングでも同様の効果が得られると考えられる。
4本ならば、全力疾走合計2分、レスト12分の合計14分。
6本ならば、全力疾走合計3分、レスト20分の合計23分で終了する。
トレーニングの時間は短いが、30秒の全力疾走は、「All Out」することが必要だ。
トレーニングの前には、10秒ほどの疾走を取り入れた5分ほどのウォーミングアップをすることが推奨されている。
ウィンゲート式インターバルの効果
上記の論文では、ウィンゲート式インターバルを行うグループと、持久的トレーニングをするグループの2つのグループで比較を行っている。
・ウィンゲート式インターバルグループ
30秒 × 4本から6本 レスト4分
を2週間で6セット。
30秒の全力を2週間で30回行う(全力時間は合計15分)。
・持久的トレーニンググループ
65%VO2maxの運動強度で90分から120分
を2週間で6セット。
2週間で合計630分のトレーニングを行う。
被験者は、各グループ8名ずつ、計16名の20歳から23歳の大学生だ。
両グループは、細かい点で差はあるものの、ほぼ同様の効果があったとしている。
論文内で報告されていたウィンゲート式インターバルの効果は、
・タイムトライアルでのパフォーマンス向上
・筋肉の酸素利用効率の向上
・筋肉のバッファリングキャパシティの向上
※筋肉のバッファリングキャパシティは、持久的パフォーマンスと相関が高いと言われている。
・筋肉のグリコーゲン貯蔵量の増加
同教授の別の論文には、他にも
・実験前のVO2max80%の強度の運動での疲れ果てるまでの時間の延伸
・心血管の出力の向上
・動脈硬化の低減
・ミトコンドリアの増加
・毛細血管の増加
があると記載がある。
詳細の効果のグラフは、各論文を参照頂きたいが、効果が大きく見えたのは、「実験前のVO2max80%の強度の運動での疲れ果てるまでの時間の延伸」だ。
ウィンゲート式インターバルを2週間行ったことで、なんと継続時間が2倍になっている。
それがこちらのグラフだ。
CONは何もしなかったグループ、SITはウィンゲート式インターバルを行ったグループの結果だ。
たった2週間、30秒の全力疾走を30本で、ここまで大きな効果が得られるとは、凄まじい。
ウィンゲート式インターバルでミトコンドリアが増加する理由
ウィンゲート式インターバルでミトコンドリアが増加する理由については、多くの参考文献と図を交えて詳しく語られている同教授の論文がある。
"Physiological adaptations to low-volume, high-intensity interval training in health and disease"
訳すと「健康と病理における少ない量の強度インターバルトレーニングに対する生理的な適応」だ。
ミトコンドリアの生合成に関わるいくつかのステップを経るのだが、詳細は措く。
ウィンゲート式インターバルの試験運用
この論文を読んでから、ずっと気になっていたので、Garminでのワークアウトは設定していなかったが、まずは試験的に行ってみた。
ワークアウト設定をしていなかったので、だいたい30秒全力で走れそうな距離を走り、4分弱のレストを取る、というプロトコルで4本やってみた。
レストの間に、スタート位置までジョグをしながら戻り、回復したら次の全力疾走をスタートした。
本当は6本やってみようと思っていたが、4本で次に行く気力がなくなり終了。
公園で水を浴びまくった。
「これ、すげー効く」
それが第一印象。
実際、帰宅後はビールを飲もうと思っていたが、あまりに疲れ果てており、ビールを飲む気力がなかった。
翌朝は、朝ランを回避し、いつもよりも1時間以上ゆっくり寝てしまった。
注意する点としては、
「転ばないこと」
「30秒で疲れ切るように全速力で走ること」
だと感じた。
いつもの癖で、30秒間、走り切れそうな速度で抑え気味に走ってしまったが、もっと飛ばす必要があったと思った。
また、普段走らない速度で走ると、体幹がゆらぎ、左右の足がぶつかったりして、転びそうになったので、気を付けた方がよい。
※Garminでワークアウト設定を行った上で、しっかりウィンゲート式インターバルを行った際には、再度報告する予定だ。
ちなみにワークアウトの設定はこんな感じ。
まとめ
時間をかけずに最大の効果を出すためのトレーニングとして、「ウィンゲート式インターバル」を取り上げてみた。
マラソンのトレーニングをしている方であっても、なかなか全速力で走ることはないのではないだろうか。
全速力で走ることで、多くの筋繊維が動員され、非常に高い効果を得られると考えられる。
暑い季節は特に、長い時間走ることで脱水や熱中症の危険が高まる。
短い時間で効果を出せる「ウィンゲート式インターバル」は、走る時間が短いため暑い季節にも取り組みやすいトレーニングだ。
今日から約2週間後に、リレーマラソンに参加する予定があるので、これから2週間、しっかり「ウィンゲート式インターバル」に取り組み、その効果を見せつけたいと思う。
※2018年7月8日追記
実際にウィンゲート式インターバルをやってみたエントリーはこちら。
www.all-out-running.com
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