自分の行ったことが、他の誰かに良い影響を与えることができたとしたら。
それは、非常に嬉しいことだと思う。
影響を与えられた人の数が多ければ多いほど、自分の行ったことの価値も上がるかもしれない。
Official髭男dismの「HELLO」を聴きながら、そんなことを感じる。
最近は全く走っていない自分が、しょうもないクソエントリーを垂れ流しているのも、
「何かの影響を与えられるかもしれない」
という淡い期待があるから、なのかもしれない。
さして特技も持っていない俺だが、かつて、多くの友人に影響を与えた武勇伝を、ふと思い出した。
そう。
あれは、忘れもしない17歳の夏のことだ。
あの頃は、
朝は高校のトレーニングルームに向かい筋トレをして。
3時間目くらいになると、授業中に早弁をして。
昼休みは、学校に配達に来るコッペパン屋さんのパンを買い、バスケをして。
つまらん授業を抜け出し、バスケをし。
退屈な授業の時は、クラスに落ちていた「ノーマーク爆牌党」を読んだり。
放課後は部活の野球。
部活が終わると、自転車通学していた仲間3人で、コンビニに立ち寄り「牛肉コロッケ」を食べる。
すべて、本能の赴くまま、人生を楽しんでいた。
17歳の男子だった俺は、まぁそこそこ、17歳の男子で。
いっちょ前に告白なんかしてみたりもして、
「まずは友達からね」
と言われて、今も友達だよね?と、とてつもなく困惑したりもした。
部室に置かれていたエロ本を家に持ち帰って、ちょっとしたアバンチュールを過ごしたりもした。
エロ本では少々物足りなくて、近所のレンタルビデオ屋さんに行ってみた。
レンタルビデオ屋さんの、その手のコーナーは、のれんのようなもので目隠しされていた。
17歳な自分でも入っても良いのか、ドキドキしながら、そののれんをくぐった。
そこに広がる世界は、これまでに見たことがないパラダイスだった。
ギンギンに血が巡り、俺は、どうしようもなくなり、勇気を出して、レンタルチャレンジをしてみようと試みた。
お気に入りの3本を手に取り、お会計カウンターに向かう。
カモフラージュのために、ジャッキー・チェンの映画もそえる。
17歳の会員証。
「店員さんよ。頼む。気付かないでくれ!」
「あぁ、お客様、こちらのビデオは、18歳以上でないと借りれないので。」
バレた。。。
そして、俺は、週末にジャッキー・チェンの映画を観ることになった。
*****
数週間が経ち、近所の古本屋さんに行く機会があった。
これまでは気付かなかったのだが、あの日以来、血の巡りが良くなっていて、これまでとは違う力を手に入れた俺は、気付いたのだ。
この古本屋さんには、その手のビデオが売られていることに。
古本屋さん特有の匂いの中にある、ジャケットが色あせたVHSのテープ。
3本ほど売られていたが、値段を確認すると、一番安いもので「1500円」。
「いける!」
そして、俺は、1500円で、手に入れたのだ。
このとき、年齢確認がなかったことが、幸いした。
その1500円のブツは、いわゆる「洋モノ」ってやつで。
モザイクの代わりに、画面が9分割されていて、それっぽいところが、黄色の半透明になるという仕組みになっていた。
半透明だったので、色はともかく、その造形は、はっきりと確認できた。
まだ純粋無垢なチェリーだったため、俺には刺激が強すぎた。
あまり楽しめなかった。
強烈すぎたのだ。
そして、俺は、その1500円のブツを、高校に持って行くことにした。
まずは、クラスメイトの「ナベ」に渡した。
ナベは、色々経験済みなようだったので、大丈夫だろう、そう思って渡した。
翌日、ナベはすごく興奮しながら俺に近づいてきた。
「あれ、まじですげーよ!」
「ほかのみんなにも回そうぜ!」
そして、俺の1500円は、瞬く間に、学年中の男子が見ることになった。
試写会まで開催されたりもした。
野球部の先輩からも、
「お前の持ってきたアレ。すげーらしいな。」
とか、おちょくられもした。
アレの効果は大きく。
話したことない男子とでも、
「アレを購入した男」
として、話が盛り上がる。
俺の名は、アレにより轟くことになったのだ。
俺の購入した「アレ」は、俺の高校の多くの男子が観ることになり。
さして特技がなかった俺は、ものすごい影響力を発揮することになったのだ。
果たして、「アレ」が、みんなの人生にどのような効果をもたらしたのか。
それは、俺には計り知れない。
でも、この時感じたんだ。
「多くの人々に影響を与えられるような大きな男になりたい」
って。
*****
そんな盛り上がりも、忘れかけていた約1年後。
野球部のレフトの「北京」が、俺に話しかけてきた。
「北京」は、父親の仕事の関係でシンガポールに住んでいたことがあるということと、顔が「北京」ぽいということであだ名が「北京」になった。
シンガポールに住んでいたことは、もはや、ほぼ無関係のあだ名だ。
「あのさ。あのビデオのことなんだけど。」
「ん?あぁ、あれ?」
俺は驚きを隠せなかった。
もはや、どこに行ったのかも把握していなかったし、完全に忘却の彼方にあった。
「あのさぁ。あれ、俺、もらってもいいかな?」
「俺、あれじゃないともうダメになっちゃったんだよ。」
その北京の告白に、俺は再度、喜びを感じた。
「俺の購入したアレが、このまで人を揺り動かすのか」
と。
そして、俺は北京にアレをプレゼントしたのだった。
今度、野球部で集まった時には、北京に、アレの行方を聞いてみたいと思う。
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