3人娘の親父が走る。いつだって全力中年。

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低酸素トレーニングの取り入れ方 for 市民ランナー

先日、スポリートのマラソンアンバサダーの活動として、平塚駅徒歩3分のとろこにある、
高地トレーニング専用スタジオ「Koach」
にて、低酸素トレーニングを体験してきた。


その時の記事がSpoleteのホームページに掲載されているので、概要はこちらをご確認いただきたい。
ちなみに記事を書いたのは、今年の湘南国際マラソンが初マラソンとなる予定のはてなブロガーのあやめさん (id:okmtaym) だ。
spolete.jp



もともと俺は、「高地トレーニング」に興味があった。


アスリートたちが行っている高地トレーニングがどのようなものなのか、どれほどの効果があるのか。


最新の高地トレーニングについて論文を調べてみたところ「Living High, Training Low」が最新のセオリーだ。
3から4週間程度、標高2500m程度のところで過ごし、1250m程度のところでトレーニングを行うことで、酸素利用効率が高まり持久的な運動能力の向上が見込める。


詳しくは、こちらの調査報告のエントリーを。
www.all-out-running.com



この高地トレーニング、市民ランナーには取り入れることは難しいように思える。


そこで、ここでは手軽に高地トレーニングを行える低酸素トレーニングジムの体験と、論文の調査を交えて、市民ランナー向けの低酸素トレーニングについて考察してみたい。


目次

低酸素トレーニング体験

高地トレーニングと同等の低酸素状態を作りだし、低酸素トレーニングを行えるジムがあるらしい。

そして、そのような低酸素トレーニングを体験させていただけると言う案内をスポリートさんから頂いた。

「これは、しっかり体験して、検証して、記事にしたい。」

ということで、Koachの低酸素トレーニングを体験してきた。



Koachの低酸素ルームには、トレッドミルやエアロバイクなどが置かれている。
酸素濃度は、15%程度と、標高2500m相当の濃度になっている。
ちなみに海抜0mでは、20.1%程度だ。


俺は、胸に巻く心拍計を装着する。
心拍計は、前方のディスプレイと接続され、リアルタイムに心拍数を確認できる。


また、トレーニング中に酸欠状態に陥っていないか確認するために、血中の酸素濃度を測定できるパルスオキシメーターで、トレーニング中に定期的に測定を行う。
正確には、「経皮動脈血酸素飽和度(SpO2)」を測定している。
平常時は、95%から100%程度だ。
90%以下が継続すると酸欠状態となる。


低酸素トレーニングと動脈血酸素飽和度(SpO2)の関係については、このエントリーの後半に論文とともに詳細を記載している。


低酸素ルームのトレッドミルに乗り、軽く走り始める。
軽いジョグであれば、それほど変化が内容に思えた。
5分ほどジョグをして、SpO2を測定してみると、「92%」。
この数値に、どれほどの意味があるのか、良く分からなかった。


その後、速度を少しずつ上げていき、心拍数が150を超える走りをすると、さすがにキツいと感じる。

キロ4分30秒ペースくらい。
普段ならこのペースで10kmくらいなら走れると思う。

が、5分程度でほぼ限界。

その後、インターミッテント走的に、疾走→ジョグを繰り返す走りを5分ほど行い、ほぼオールアウト。

その直後のSpO2は、「82%」だった。



オールアウトのあと、しばらく足を止めていたが、呼吸と心拍数の戻りが、普段よりも遅いと感じた。


この一連の走りとSpO2について、トレーナーの石井さんの言葉を正確には覚えていないのだが、
「俺はSpO2が低下しやすい」
とおっしゃっていた。

この点については、この後の論文調査で、どういうことか明らかにする。


低酸素トレーニングについて体感をまとめると、

・軽いジョグなら、普段とほぼ変わらない感じ

・強度を上げると、普段よりも継続する時間が短くなる

・オールアウト後の心拍と呼吸の復活に時間がかかる

という感じだ。

低酸素トレーニングと動脈血酸素飽和度

血中の酸素の濃度を計測するためのパルスオキシメーター。

パルスオキシメーターで計測しているものは、「経皮動脈血酸素飽和度(SpO2)」だ。

血中のヘモグロビンのうち、酸素と結びついているヘモグロビンの割合を示すものだ。

最大値は100%で、平静時は、95~100%。

この数値が大きければ、より多くの酸素を体中に運べる状態だということだ。


俺は、今回低酸素トレーニングでオールアウトした状態で「82%」を記録し、「SpO2が低下しやすい」と評価を受けた。


そこで調べてみた。

こちらの論文だ。
"Moderate exercise in hypoxia induces a greater arterial desaturation in trained than untrained men"


直訳すると、
「低酸素状態での適切な運動では、トレーニングしている人の方が動脈血酸素飽和度がより低い」


論文内では、以下のような実験を行っている。

トレーニングしている人7名と
トレーニングしていない人7名
の2つのグループに分け、

酸素濃度が20.9%、18.7%、17.3%、15.4%、13.0%、11.7%の環境下で、強度を変えて運動をし、

その際の、SpO2を測定している。

その結果のグラフがこちらだ。
f:id:Alloutrun:20180613181143j:plain
※上記論文のFig.1より引用


○がトレーニングしている人
●がトレーニングしていない人

海抜0mの酸素濃度20.9%(0.209)では、トレーニングしている人の方がSpO2は高い。

しかし、酸素濃度が低くなるにつれ、トレーニングしている人の方がSpO2が大きく低下していることが分かる。

非常に興味深い。

低酸素環境下では、トレーニングを積んでいる人の方が、SpO2が低下しやすいのだ。


トレーニングして、より効率的に酸素を利用できるはずの人の方が、酸素が薄くなると、血中の酸素の濃度が薄くなるのだ。


これはどうやら、

SpO2の低下が大きい = 低酸素刺激に対する換気応答が高い

と言えて、トレーニングしている人は、筋肉がすぐに酸素を使えるような状態になりやすく、より多くの酸素を(色々な細胞に)抽出できるためSpO2が低下しやすいらしい。


ということで、SpO2「82%」とかなり低めの値をたたき出した俺は、普段からトレーニングしているからこそ、低めの値を出せたのだと思う。


なお、低酸素環境下でのトレーニングを継続することで、低酸素環境に順応し、SpO2の低下を抑制できるようになる。


まとめ:低酸素トレーニングの取り入れ方

低酸素トレーニングを継続的に行えば、
・酸素利用効率の向上
・乳酸閾値の向上
・赤血球量の増加
などの効果があり、持久的ランニングのパフォーマンス向上も期待できる。


しかしながら、何日も連続して低酸素環境下でトレーニングをすることは、市民ランナーには難しい。

「1日30分から1時間程度、数日おきぐらいにジムに通う」
くらいが適切なペースだろう。

そのような低頻度の低酸素トレーニングで効果があるのだろうか。


その疑問に対しては、こちらの記事が回答してくれる。
「低酸素施設の利用」



こちらの記事によると、以下のような効果があったと記載がある。

健康な男子14名
15%の低酸素環境下
5日間 65%VO2Maxの負荷の運動を45分間

有意なVO2Maxの向上
運動継続時間の向上


成人男子18名
14.5%の低酸素環境下
9日間 2時間滞在+65%VO2Maxの負荷の運動を45分間

有意なVO2Maxの向上
有意な乳酸閾値の向上

この結果から、考察できることは、「1回のトレーニングが短かったとしても、継続的な低酸素トレーニングにより、ランニングのパフォーマンスを向上させることができる」と言うことだ。


普段の練習に加えて、低酸素トレーニングを取り入れる。

距離走やポイント練習は、普段通り行い、
つなぎのジョグを低酸素環境下で行う

という形が良さそうだ。



いかがだろうか。

本気で速くなりたいランナー、あと1秒を削り出したいと思っているランナーには、もってこいのトレーニング、低酸素トレーニング。

平塚近辺の方であれば、平塚駅徒歩3分にある「Koach」がおすすめだ。

他にも低酸素トレーニングができるジムは、色々な場所にあるので、ググっていただきたい。


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