3人娘の親父が走る。いつだって全力中年。

3人娘の親父がランニングを中心に、日々の出来事をそこはかとなく綴ります。

父の実家。

父の実家は、福井県にある。

自分が子どもの頃は、夏休みに福井に遊びに行くことが一番の楽しみだった。

大好きなおじいちゃんとおばあちゃんに会えるし、同年代のいとこたちに会えるから。


おじいちゃんとおばあちゃんは、八百屋をやっていた。

今でいうコンビニと駄菓子屋がミックスされたような品ぞろえだった。


夏に帰省すると、その店番をやらせてもらって、近所のお年寄りの方とお話したもんだった。

当時の自分は、55平米ほどの公務員宿舎に住んでいたため、

福井の父の実家の広さゆえに、おじいちゃんとおばあちゃんは大金持ちなんだと思っていた。


一軒家で2階もあるし、はなれの別棟もあるし、大きな庭もあるし。

おっきな鯉のぼりもあったし、いつでもお店のアイスクリームを食べられたし、ところてんも食べ放題だったから。


大きな庭では、帰省したら毎日のように花火をしていた。

弟のケンタロウと一緒に庭の草むらにいるアマガエルを捕まえて、大きなプールの中で泳がせたり、バッタや蝶々も捕まえ放題だった。

遠浅の三国の海に行って、朝から晩まで泳いで、砂浜で遊んで、岩場でカニを捕まえて。

おじいちゃんと一緒に朝の4時に起きて朝市に行ってお菓子を買ってもらったり。

親戚一同が介して、夜遅くまで宴会したり。


高校生くらいになったらば、いとこの同級生のちはるちゃんに恋の相談をしてみたり。



自分にとって、福井の実家は、強烈に楽しく、幸せな時間を与えてくれる場所だ。



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おじいちゃんが亡くなったのは、自分が高校生の時だった。

福井の病院に到着したときには、おじいちゃんは意識不明で。

たまに起こる凄まじい発作で、半分目を見開きながら、すごく苦しそうに、意識を取り戻しているように見えるような感じだ。

体の具合が悪かったことを、誰にも相談せず、本当にどうしようもなくなった時に、入院したと聞いている。

おじいちゃんは、自分が福井に着いた翌日に亡くなった。

おばあちゃんが、「とうさん!とうさん!」と言いながら、わんわん泣いていた。


いつも、

「男は、泣いちゃだめだ。」

「男が泣いて良いときは、親が死んだときだけだ!」

と言っていた父は、

自分たちに見られないように涙を流していた。


祖父が亡くなったとき、喪主として堂々と対応していた父は、いまの自分と同じくらいの年齢だった。



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おばあちゃんは、一人でもしばらくは八百屋を続けていた。

「やっていた方がボケないから」と。


そして、おじいちゃんが亡くなってから、多くの趣味を始めた。

カラオケ、太極拳、グランドゴルフ、そして旅行。

「とうさんが死んでからの方が、人生が楽しいよ。」

なんて言ったりして、笑っていた。



自分が、大学生になり、社会人になり、結婚し、子どもが生まれても、定期的に福井には帰って、

おばあちゃんと福井に住んでいる親戚には会いに行っていた。

お墓参りをしたかったのと、やっぱり、福井の実家が好きだったから。


子どもの頃の楽しい思い出をみんなで話して、みんなで大笑いして。



でも、おばあちゃんの調子が悪くなったのは、コロナの頃だった。

コロナで面会制限があって、会いにも行けず。

2022年の5月におばあちゃんは亡くなった。

死に目に会えなかった後悔というか、悔しさというか、歯がゆさは、一生忘れられない想いだ。



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その後も福井には、何度か帰っている。

つい先日、3月2日から3日に、福井に帰った。

福井の父の実家の土地に買い手がついたため、更地にするためだ。

最後に、福井の父の実家の写真を撮って、集まれる親戚で思い出話をするためだ。

実家の全体

なんだろうなぁ


本当に寂しいなぁ


生きていると、こんなに寂しいこともあるんだなぁ


文字には表せない、楽しくて幸せな思い出がたくさん詰まった、あの場所に、もう戻れないんだな。


これでもか!っていうくらい、父の実家の部屋を、写真に収めた。



それぞれの場所に、想い入れがあり、これが最後だと思うと、どうしようもなく、寂しくて、涙が出てきました。



「親が死ぬときじゃなくても涙を流してもいいでしょ?」と父に言いたいです。



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それから数週間が経ち。

福井に住んでいる父の妹、自分からすると叔母さんから写真が届いた。

父の実家は、取り壊されていた。




時を同じくして、北陸新幹線が、福井駅まで開通した。

ブルーインパルスが、その開通のお祝いに、大空を飛んだ。



自分にはどうすることもできないところで、世界は進化し続ける。



温故知新。



おじいちゃんも、おばあちゃんも、福井の実家も、すべては自分の心に残り続ける。

お父さん、お母さん、弟と


ちゃんとしないとな、自分も。


ひとまず、明後日の小学校の祝辞、しっかりしないとな。

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