オンライン飲み会にて、こんな話をした。
「男は、昔、尖がっていたことを自慢したがる。」
ふむ。
なるほど。
「昔、俺はこんなに悪いことしてたんだぜ。」
「そんな悪かった俺も、今は立派な社会人だぜ。」
「今でも、たまには悪い男になっちゃうこともあるんだぜ。」
みたいな、「The男」をアピールするような感じなのだろうか。
この話題で盛り上がるオンライン会場を横目で見ながら、俺自身も昔話を思い出していた。
そして、俺の中の「The男」の血が騒ぎだしてきたので、
「俺が昔、尖がっていた話」
をしてみたいと思う。
*****
あれは、高校生の時の話だ。
夏場になると、屋外のプールで、水泳の授業が行われることが多かった。
「水温と気温を足して〇〇度以上ならば、実施」
というルールがあった。
曇りや雨の日など、少し肌寒い日は、是非とも水泳はやめて欲しいと思っていた。
ある肌寒い日。
みんなの願いもむなしく、ギリギリの温度のラインをクリアして、水泳の授業が実施された。
プールに全身を投じたときの、あの冷たさ。
プールサイドが極寒の地のように感じる、あの寒さ。
紫色になる唇。
ガタガタ震える体。
なんとか耐えしのぎ、温水が出るシャワーに一目散に向かう。
そのシャワーに並んでいると、血の気が多い高校生たちの会話は、もっぱら、
「一体、誰が一番『尖がっている』のか?」
というものだった。
俺は、この話題が好きじゃなかった。
なんせ、俺は、めちゃくちゃに尖がっていたから。
友達が多く、いじられることが多い、「サカ」という野球部のキャプテンがいた。
「『サカ』が一番尖がっているよな!」
サカは、必死に股間を隠している。
「ちげーよ!」
「いつもは、こんなんじゃねーよ!」
全体が騒ぎ出した横で、俺は、股間を隠していた。
もともとそこまで大きくない上に、この寒さにより完全に尖がってしまい、小さなテントが張られていたから。
「あ!こうくん(俺)も相当に尖がってるぜ!」
クラスの番長的な存在の「ナベ」に見つかってしまった。
(しまった!見つかってしまった!)
でも、その頃になると、サカがみんなに水着を脱がされそうになっていて、俺の尖がりには、みんな興味がなくなっていた。
サカは、格闘の末、水着を脱がされ、男子が着替えていた柔道場に、股間を抑えながら全裸で走っていった。
サカの着替えは隠されていた。
そして、その日、サカは柔道着でその後の授業を受けたのだった。
そして、サカは、しばらくの間、
「あそこがドリル」
と、いじられていた。
でも、俺は知っていた。
サカと一緒に風呂にも入ったこともある俺は、知っていた。
サカよりも俺のほうが「ドリル」になり「尖がる」可能性が高いということを。
その日の野球の部活に柔道着で現れた、サカ。
一緒にピッチャーだったサカと、グラウンドを走り始める。
「今日は、大変だったね。」
「心配すんな。俺もかなり尖がっているから。」
*****
この歳になると、冷たいプールに入ることもなくなり、すっかりぬるま湯の中で過ごすことが多くなり、
俺が尖がることは少なくなった。
「俺も昔は、相当に尖がっていたんだよ。」
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