朝の食卓での話だ。
長女が週末に友人と遊びに行ったときの話を奥さんにしていた。
俺は、リビングのソファに座り、テレビの天気予報を見ながら、聞き耳を立てていた。
「〇〇ちゃんと××ちゃんが、ママのこと綺麗って言っていたんだよ!」
「えーー。ほんとに?嬉しいなぁ」
ほほぉ
テレビでは関東の詳しいお天気のコーナーになっていたが、お天気お姉さんの声は、頭に入ってこなくなった。
長女と奥さんの話が気になり始めて、食卓に移動する。
パパの話はなかったのだろうか?
長女と奥さんは、相変わらず笑顔で話をしている。
「ママのこと綺麗って言ってくれるなんて、2人とも良い子だね。笑」
「ママは、美人さんだよー」
てな感じだ。
女2人、楽しそうに話をしている。
で、パパの話は出てこなかったのだろうか?
食卓につき、コーヒーカップに残ったコーヒーを一口飲み、俺はその会話に加わってみた。
「その子たちは、パパのことについて、何も言ってなかったの?パパがカッコいいとかさ。」
「言うわけないじゃん。だって、パパのこと知らない子たちだもん。」
「あ、そうなんだ。」
長女は話を続けた。
「パパ、親じの会で色々参加して、パパのこと知っている友達多いけど、パパがカッコいいとか誰っっ一人、言ってないよ。」
「『誰っっ一人』って、そこ強調しすぎだろ。」
「だって、誰も言ってないよ。」
誰も言っていないことはないだろう。
俺は、齢41にして、これだけ走っていて、結構シュッとしているお父さんのはずだ。
俺はコーヒーを飲み干し、少々ムキになり始めていた。
「じゃぁ、カッコいいじゃなくてもさ、爽やかだとか、若く見えるとか、お腹出てないよね、とか、なんかあるでしょ。」
俺のことを少しでも良く評価してくれている話を聞いて、ちょっと幸せな気持ちで会社に向かいたかった。
「全然ないよ。」
「ぉぅ・・・。そうか・・・。」
コーヒーカップを口に運び、コーヒーを飲もうとしたが、コーヒーカップは既にからっぽだった。
からっぽのコーヒーカップをそそくさと置き、長女からの言葉を待った。
「でも、私は、パパはすごくカッコ良いと思うよ。」
そんなフォローを期待していた。
だが、期待した俺がバカだった。
長女は、友達と遊びに行った話を、奥さんに楽しそうにし始めた。
俺は言葉にできない虚無感に包まれる中、会社に向かうことになった。
そんな一日の始まり。
女だらけの家族に囲まれる、パパ一人。
だれか、
「カッコいいね!」
って、言ってくれないかなぁ~。
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