全力中年は激怒した。
必ず、かのサブ3とやらを達成せねばならぬと決意した。
全力中年にはサブ3達成の難しさがわからぬ。
全力中年は、普通のサラリーマンである。
*****
中学生のころ、国語の教科書に、
という太宰治が書いた短編小説が掲載されていた。
「心の友、セリヌンティウスのために、死に物狂いで走っているメロス、すごいなぁ」
「『走れ!メロス。』ってなんかカッコいい言葉だなぁ」
くらいの薄っぺらい感想を持っていた。
そもそも当時の俺は国語が好きじゃなかったので、国語の授業は、早弁をするとかお昼寝をするなどの時間にあてていた。
大人になって、改めて「走れメロス」を読み返してみた。
ツッコミどころ満載だった。
まず、妹の結婚式のための買い物にきた街で、王様が暴君であることを知り、激怒したのち、王城に乗り込むだろうか。
俺が新宿にクリスマスの買い物をしに行き、区長や都知事が暴君だと知ったところで、ふーんと思うくらいで、普通に電車に乗って帰宅するだろう。
そして、自分が妹の結婚式をしたいがために、王様に対し3日間の猶予を申し出て、自分の身代わりのいけにえに2年ぶりに会う親友(セリヌンティウス)を、親友の断りなしに差し出している。
俺がセリヌンティウスなら、その時点でメロスとは絶交だ。
さらに、自分の街に戻るや、翌日に妹の結婚式をやりたいと、花婿に前日の晩に話に行く。
花婿は当然、いきなりすぎると反対するのだが、メロスはごり押しする。
そして、翌日に結婚式が開かれることになる。
メロス、素晴らしい調整力だ。
メロスは、3日間の間、片道約40km(10里)の往復の移動をする。
だが、しっかり睡眠もとり、結婚式という宴席で大いに盛り上がっている。
身代わりの親友が縄に結ばれ、命の危険にさらされているというのに。
やはり、こんな男とは絶交した方がいいだろう。
メロスは、王城に戻る際、大雨の影響で氾濫した川を渡り切り、襲われた山賊をこん棒で倒したのち、疲れを感じて、一度、盛大にあきらめることになる。
あきらめて、一度眠るのだ。
だが、近くに湧水が流れている音で起きて、その湧水を飲むことで、心も体も復活して走り始める。
そして、「走れ!メロス。」ってな感じになるわけだ。
*****
昨年の5月、俺はサブ3を達成するという意を表した。
ある種の「激怒」にも似た感情がそこにはあったかもしれない。
その後、それまで以上に走るようになった。
だが、この秋以降は、アキレス腱痛、右ひざ痛に悩まされ、思うように走れなかった。
それでも、短い距離でもいいから走っていた。
ヨガや筋トレを取り入れた。
で、臨んだ、2019年12月の湘南国際マラソン。
3時間23分44秒。
1年前の湘南から、23秒のタイム更新。
その後、全力で走った、2020年1月の港南区健康マラソン大会5.36km。
22分44秒。
1年前と全くの同タイム。
自分の不甲斐なさ、走力の成長のなさにガッカリした。
そして、タイミングを同じくして、一気に仕事が忙しくなった。
「走れメロス」で言うと、メロスが疲労困憊で、盛大にあきらめてしまったときのようだ。
俺に、湧水は湧くのだろうか。
いや。
湧いてくる水に期待をよせてもしかたない。
自分で立ち上がらなくてはな。
走れ!全力中年。
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