3人娘の親父が走る。いつだって全力中年。

3人娘の親父がランニングを中心に、日々の出来事をそこはかとなく綴ります。

「死ぬかもしれない」と思った日。

ここに書くことは、まぎれもない事実だ。

「死ぬかもしれない」と思ったが、今確実に生きていて、このブログを書いている。



*****



ある日、ソファで寝ていた日。

目が覚めると、胸に痛みを感じた。

その痛みは、徐々に増していった。

胸の前面、広範囲に痛みを感じた。

こんな種の痛みは、経験したことがなかった。


家族に心配されるも、しばらく安静にしていたら治るだろうと思い、痛みをこらえていた。


痛みはどんどん強くなり、どんな体勢をとっても痛みが和らぐことはなかった。

心なしか、息を吸い込みにくい。

熱は平熱。


「早く病院行こうよ!」

奥さんと長女が言う。


俺は病院が嫌いだ。

だから、しばらく我慢した。


ネットで自分の症状を調べたかったが、スマホを操作できるような状態ではないほど、痛みが強かった。


奥さんが調べると、

心筋梗塞、狭心症、気胸(肺に穴が開く病気)などが出てきた。


強い痛みと1時間ほど格闘したが、調べて出てくる病名が、命に関わるものしか見つからないため、病院に行く必要があると判断した。

好きとか嫌いとかの問題ではなさそうだ。


救急車を呼ぶレベルだったかもしれないが、まずは町医者に向かった。

奥さんの運転で、俺は2列目シートに座った。

心配そうに見送る娘3人。



*****



診察を待つ間、痛みは激痛に変わっていた。


新型コロナの症状の場合、診察してもらえない可能性があるらしく、車で問診。

問診の間も痛みで悶絶。

痛みのせいで、呼吸も浅い。

いや、深く呼吸をすると痛い。


一刻も早く診察してもらい、何かしらの処置をしてもらいたいと思うも、そうもいかないようだ。

まじで、新型コロナ、やめて欲しい。


問診の結果、新型コロナではなさそうだということで、診察開始。


聴診器、血圧、心電図、血中酸素濃度を計測。

血中酸素濃度が「94%」と、かなり低めの値が出た。


この病院では、何の病気なのか分からないし、これ以上何もできないとのことで、総合病院の紹介状を書いて頂いた。

しかし、その総合病院、この病院から車で40分くらいかかる場所だった。


でも、しかたがない。

奥さんの運転で、総合病院を目指す。



この移動中、胸の痛みは、最高潮を迎えた。

気を失うレベル。


「この痛み、俺は長男だから我慢できたけど次男だったら我慢できなかった」と思う。
※「鬼滅の刃」 第24話 炭治郎のセリフより



この時、俺は「死」を覚悟した。



運転する奥さんに対して、

「もし、俺が死んだら、、、」

と言いかけた。


人は、死ぬ直前に走馬灯のように記憶がよみがえると言う。


真っ先に浮かんだのは、楓子の顔だった。

「楓子もこれくらいキツい思いをしていたのだろうか。」


次々に娘たちの顔、奥さんの顔が思い浮かぶ。

「家族と一緒に、もっとやりたいことがたくさんあるんだけど。」


ずっと辛い想いをさせてしまっていた人の顔が思い浮かぶ。

「『ごめんなさい』って言えないまま、俺はいなくなるんだな。」


感謝の気持ちを伝えられていなかった人の顔が思い浮かぶ。

「『ありがとう』と直接言わなくちゃいけないのに。」


そして、両親。

「『子どもは絶対に親より先に死ぬなよ』って言われていたのに、そうなってしまうかもしれない。ごめんなさい。」



やっぱり、死ぬわけにいかない。

痛みに耐えながら、意識を保った。



*****



総合病院に到着すると、看護師の方に問診を受けて、車いすに座らせられた。

ここで奥さんと離れ離れになる。


少しの段差を越えるたびに、痛みがキツく感じる。


車いすで運ばれると、小型の移動式ベッドに移された。

上着を脱がされ、お医者さんに問診されながら、点滴を付けられる。

血中酸素濃度の装置、心電図と呼吸数が分かる装置を付けられる。

ピッピッと音が鳴り始めた。

そのまま、その場でレントゲン写真を撮影。

胸部、腹部のエコー検査。


何やら、難しい言葉で検査員とお医者さんがやり取りをしている。


「俺、一体、どこが悪いんですか」

そう思いながらも、怒涛の勢いで検査と問診が続き、次にCT検査をすることになった。


痛みは、平行線か、少し和らいで来ているように感じた。


ベッドに寝たまま、CT検査室へ。

普通のCTと、造影剤を投入してのCT、2回撮影。


造影剤が体に入ると、体中が焼けるように熱くなることを知る。


その後、検査結果がお医者さんから説明があった。


「専門医の方にも結果を見てもらったが、今のところ、命に関わるような体の異常は認められない。」

と。


「え?いや、この痛み何なんでしょうか。」


「今のところ、良く分からない。しばらく安静にして様子を見て下さい。」

と。


あまりの怒涛の検査に、気付けなかったが、その頃、痛みは、だいぶ和らいで来ていた。

ただ、深く呼吸をすると痛みが強くなり、相変わらず浅い呼吸しかできない状態だった。


結局、俺は、そのまま何の薬も出ず、2万円のお会計をして、胸の痛みが残るまま帰宅することになった。



*****



午後3時。

この日、朝起きてからお茶以外、何も口にしていなかったことを思い出し、おにぎり1個、ポカリ500mlを。


午後4時過ぎに帰宅。

玄関を開けると、楓子が出てくれた。

「あ!パパ!!」

すごく驚いた様子だった。


朝の俺の様子を見ていて、俺がそのまま入院すると思って、娘たちは入院のための準備をしていたという。

そこに、俺が帰ってきたので、驚いたと。



ふと奥さんの顔を見ると、額に赤いアザができていた。

楓子の看病のときにも同じ場所に出てきたアザだ。


相当なストレスを感じさせてしまったようだ。

本当に申し訳ない。



家に帰ってこれた安堵感から、俺は着替えてすぐにベッドの上で寝てしまった。

痛みは残っており、息を大きく吸い込めない状態のまま。



*****



それから2日がたった頃、胸の痛みは完全になくなった。


結局、何が原因なのか分からなかった。



今年に入ってから、うちの家族には、禍が多く降り注いでいる。


もう、本当に勘弁してほしい。


このコロナ禍が終わったら、俺は、両親の故郷である福井に行こうと思っている。

ご先祖様のお墓参りをするために。



そして、今をしっかり生きるために、日々、やらなければいけないことをやろうと思った。



命は儚い。

いつなくなるかも分からない。

明日が今日と一緒とは限らない。



楓子の経験、自分の経験から学んだことを、忘れないようにしたい。




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