社会人になってからも、未だに卒業した大学の研究室の学生たちの研究発表会に呼んで戴いている。
最近はあまり参加できていないけど、数年前に研究発表会に参加させて頂いて、打ち上げの席で、教授と話をした。
教授は、こう話してくれた。
「長いこと1つのことをやり続けてきて本当に良かったと思っている。」
「続けていれば、理解してくれる人が増えて、今ではこれだけの研究室にできたよ。」
「『オンリーワン』を目指してきて、本当に良かった。」
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大学3年生から、研究室に配属される。
俺は、運よく自分の希望する「人間形ロボット」の研究をしている教授の研究室に入ることができた。
高校の時にNHKスペシャルで見た番組で紹介されていた研究室。
人間のように歩くロボットを見て、
「この研究室に行きたい」
と思っていた。
教授は非常に厳しく、卒論、修論、ともに、大学に泊まり込む日々が続いていた。
教授が、何かあると、良く言っていた言葉がある。
「ナンバーワンよりオンリーワンを目指すんだ。」
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研究には、そのときそのときで、「トレンド」がある。
例えば、コンピュータサイエンスの分野での最近あったトレンドでは、
ディープラーニングによる人工知能(AI)
だったりする。
そんなトレンドには、様々な企業からお金が集まる。
俺が研究室に入った頃の、ロボット研究のトレンドと言えば、
災害救助ロボットとか
古典的AIによる言語の獲得とか
だったかな。
一方、教授の研究は、トレンドとは違うところにあって、少し異質で、
二足歩行ロボットとか
表情を再現するロボットとか
人間の咀嚼を再現するロボットとか
一見、面白いが、工業的な意義が分かりにくい研究だと思う。
だから、あんまりお金がなかったのかもしれない。
実際、自分が卒論と修論で手掛けたロボットは、
「人間と同じ仕組みでしゃべるロボット」
だった。
肺、声帯、舌、鼻腔、歯、口唇などを持ち、人間と同じように声を出すロボット。
ロボットなら、スピーカーで、音声合成すれば良いじゃんって思う。
でも、ハードウェアで声を再現するロボットは、世の中になく、間違いなくオンリーワンの研究だった。
だから、学会で発表すると、
「その研究は、何の意味があるんですか?」
なんていう質問を頂いたりした。
でも、「その研究」は、NTT基礎技術研究所とATRとの共同研究のもとで行われた。
オンリーワンだからこそ、強力なパートナーができたんじゃないかと思う。
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社会人として生きると、
ナンバーワンであること以上に、
オンリーワンであることが、非常に重要な気がしている。
ナンバーワンを目指すと言うことは、すごくエキサイティングだ。
ライバルの中で切磋琢磨し、一番を勝ち取ることには、非常に意義もあると思う。
でも、1番を取った時は良いけど、その後、3番になり10番になったとき。
どうなってしまうんだろう。
オンリーワンを目指すこと。
実はこれも非常に難しい。
大抵のことは、既にやられてしまっているから。
でも、オンリーワンの地位を確立できれば、この広い世の中、そのオンリーワンを活用したい人はどこかにはいる。
多くの企業がある中、生き残っていて成長を続けられている企業は、オンリーワンの価値を提供できている企業だと思う。
世の中で活躍できている著名人は、その人ならではの何か特技を持っているのだと思う。
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だから自分は、いつも、
「自分にかできないことは何か」
ということを考えるようにしている。
自分にしかできないオンリーワンがしっかり確立できたら。
たぶんそこには、その価値を必要としてくれる人が集まってきて。
教授が感じたように、心から「良かった」と言える日が来るんじゃないか、と思っている。
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