3人娘の親父が走る。いつだって全力中年。

3人娘の親父がランニングを中心に、日々の出来事をそこはかとなく綴ります。

【論文調査】ランニングと呼吸。

「残りあと1000m、全力で走り切る!!」

レースの最後は、心肺が悲鳴を上げながらも必死に走り切る。

普段ジョギングしている際は、あまり気にならない「呼吸」。

だが、いざというとき、呼吸が乱れ、辛くなることがある。

ここでは、ランニング時の呼吸について、2つの論文を紹介し、ランニングのパフォーマンスを最大限発揮できるであろう呼吸の方法を紹介しようと思う。


本日紹介するのはこちらの2つの論文だ。

1."Running and breathing in mammals"

 訳して「哺乳類のランニングと呼吸」。1983年の論文ではあるが、かの有名な科学誌「Science」の記事で、ランニングと呼吸関連で最も引用数が多い論文だ。


2."Effects of Nasal or Oral Breathing on Anaerobic Power Output and Metabolic Responses"

 訳すと「無酸素運動時の鼻呼吸と口呼吸におけるパワー発揮と代謝応答について」。ランニング的な有酸素運動ではないが、2017年の論文で最新の研究結果がまとめられている。


二足歩行と呼吸

1つ目の論文では、人間が二足歩行を獲得したことで、持久的な運動に対する適応能力を獲得できたと書かれている。

なぜか。

一般的な4足歩行の哺乳類は、
「1回の歩行サイクルにつき、1回の呼吸サイクル」
という制限があるという。

この論文では、馬が例に挙げられていたが、
・脚が体の中心に近づくタイミングで肺が縮み、息を吐き切る
・脚が体の中心から離れたタイミングで肺が膨らみ、息を吸い切る

と、歩行サイクルと呼吸サイクルが同期せざるを得ない身体的な特徴を持つ。

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※論文1のFig.3より引用

「I」は、「Inhalation」で吸うこと。
「E」は、「Exhalation」で吐くこと。


これに対し、人間は、二足歩行を獲得したことにより、肺の呼気運動の力の軸と、歩行で進むための力の軸を直行させることができ、歩行と呼吸が独立で制御できるようになったと言う。


この呼吸と歩行を独立制御できるようになったことが、人間の持久的な能力の飛躍的な向上に繋がったと書かれている。


すなわち、速く走る際には、ストライドを増やしピッチを増やすが、そのピッチと独立た周期で呼吸を行えるため、体に必要な酸素を十分に取り入れられるから、問題なく長距離を走れるようになったのだ。

4歩で吸って吐いてを1サイクル

1の論文では、長距離走のエリートランナーのストライドと呼吸のタイミングを分析している。


馬であれば、
1回の歩行サイクルにつき
1回の呼吸(吸って吐いて)
だ。


エリートランナーの場合、
2回の歩行サイクル(4歩分)につき
1回の呼吸(吸って吐いて)
が、ベストな周期とのことだ。


図にすると、以下の通り。

Bの軸で縦に線が出ているタイミング、右足で着地→左足着地→右足着地で歩行の1サイクル。
Cのグラフは、「E」が吐いているところで、「I」が吸っているところ。
Eのグラフは、「L」が左足で着地しているところ、「R」が右足で着地しているところ。

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※論文1のFig.4から引用


図を見ると、「ハー、ハー、スー、スー」の「大きく吐く、吐く、吸う、吸う」を呼吸の1サイクルとしており、4歩で1回、呼吸の1サイクルをこなしていることが分かる。


エリートランナーと、一般の人を比較すると、エリートランナーは、この呼吸の周期に入るまでの時間が短く、走り始めて10歩程度でこの呼吸サイクルに入ると書かれている。

ランニングの練習を積み重ねることで、より負荷の少ない呼吸パターンにすぐに入れるのだろう。

口呼吸か鼻呼吸か

論文2では、口呼吸と鼻呼吸の際の、パフォーマンスと代謝応答の測定を行っている。

こちらの論文では、最大出力のパワーに差はなかったと報告しているものの、興味深いのは、こちらの図だ。

同じ運動を口呼吸と鼻呼吸で行った際の、心拍数の上昇を測定した結果だ。

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※論文2のFigure2より引用


同じ運動をした場合、鼻呼吸の方が、心拍数が大きく上がっていることが分かる。

これは、口呼吸の方が多くの空気を取り込むことができ、心拍数を上げなくても体中に酸素を適切に運べているためである。

この論文は、無酸素運動での測定を行っているが、有酸素運動であっても、同じことが言えると考えられる。

この論文から、長時間の運動を行うには、口呼吸の方が適していると言えるだろう。


まとめ:口呼吸で4歩に1サイクル吸って吐いて

論文を調査した結果、

口呼吸で、

4歩で、1回の呼吸サイクルを行い、

ハー、ハー、スー、スー」の「大きく吐く、吐く、吸う、吸う」を1サイクルにする



ということが分かった。


ここからは、個人の見解だが、空気を吐くことを意識することで、より多くの空気を吸えて、良いパフォーマンスが発揮できると思う。

呼吸動作も、ランニングの一連の動作の一部である。

「いかに、呼吸動作にエネルギーを使わないか」が、長距離ランナーにとって、大きな命題であることは間違いがない。

まとめに記載した、呼吸方法は、走りを極めているエリートランナーの呼吸法なので、皆さんも次のランニングの際は、「4歩で1回の呼吸サイクル」を意識してランニングしていただきたいと思う。


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