まだ夏の暑さがわずかに残る秋雨の朝。
俺は食卓につき、朝食を取っていた。
時刻は、6時45分。
お味噌汁をすすっていると、長女が起きてきた。
「おはよう。」
「うん。おはよう。」
普通の家庭でも見られる、ごく普通の光景。
だが、そのごく普通の光景の中の一部に、ごく普通の家庭では、あまり見慣れない情景があった。
俺は、全裸だった。
食卓の椅子の上にバスタオルを敷いてその上に座り、俺は全裸で朝食をとっていた。
奥さんは、キッチンで朝食とお弁当の準備をしている。
次女、三女と眠い目をこすりながら、寝室のある2階から1階のリビングに降りてくる。
「おはよう。」
食卓の椅子に座っている全裸の俺が、娘たちの寝起きを見守る。
俺が全裸で食事をしていることに対して、うちの家族は誰一人として、コメントはしてこない。
俺が全裸で過ごす時間が増えたのは、この夏からだった。
みなさんご存知の通り、この夏の猛暑は尋常ではなかった。
酷暑の昼間を避けて、早朝に走るようになり、走って帰宅後、ランTとランパンを風呂場で脱ぎ、その場でランTとランパンを洗っていた。
冷たいシャワーを浴びるものの、その後も汗が止まらず、タオルで汗を拭くものの、汗が止まらないまま出勤するという、朝ランのデメリットを感じていた。
そして俺はこの夏、早朝ランの後は、ラン直後と出勤直前と朝2回シャワーを浴びることが常習化していったのだ。
2回シャワーを浴びるのならばと、1回目のシャワーの後、全裸でいることになった。
早朝ランからの全裸でソファでテレビを見ていた、早朝全裸初回。
6時過ぎに起きてきた奥さんは、「なんで全裸なの?笑」と、しっかりツッコんでくれた。
7時前に起きてきた娘たちも、俺が全裸でご飯を食べていることを、しっかりツッコんでくれた。
そこには、「なんでパパ、裸ん坊なの~」的な、ごく普通の笑いがあった。
俺の裸で、家族が一つになる瞬間があった。
が、9月も終わろうとしている、今はもう、その瞬間がない。
ふと、玉子焼きを口に運んだとき、玉子焼きにかかっていたソースが、太ももに飛んだ。
俺は一人、太ももに付いたソースを、ティッシュで拭きとる。
俺の裸で家族が一つになっていた、あの頃を思い出しながら。
俺は、いつまでラン後の全裸スタイルを突き通すのだろうか。
実は、平均心拍数124の本日のユルジョグでは、そこまで汗は掻いていない。
でも、俺が全裸で食事をしていることで、もしかしたらまた8月初旬に感じられた、家族が一つになったあの瞬間をもう一度味わえるかもしれない。
そんな淡い期待を持っての、全裸だった。
しかし、俺の淡い期待は、もろくも崩れ去り、家族全員、そこに対してはノーコメント。
やはり、同じネタでは、みんな飽きがくるんだね。
そんなことを感じた秋の初めだった。
いつもありがとうございます!
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