3人娘の親父が走る。いつだって全力中年。

3人娘の親父がランニングを中心に、日々の出来事をそこはかとなく綴ります。

ランニング時の骨盤の動き。

ランニングにおける骨盤の動きに関しては、色々な言われ方がある。

良く耳にするのは、

「骨盤の前傾」

ただ、この「骨盤の前傾」もなかなかイメージしにくい。


他にも

「脚は骨盤から動かす」

なんていうことも言われる。


このあたりを理解するために、いくつか文献を読んでみたのでまとめてみたい。

歩行時と走行時の骨盤の回転

まずは、先日も紹介した深代さんの著書「日本人は100メートル9秒台で走れるか」から。
www.all-out-running.com


この本の中では、「歩行時と走行時の骨盤の回転」と題して、以下の図が紹介されている。


「骨盤の回転」とは、頭の上から骨盤を見た時の背骨を中心軸とした回転のことを指す。

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骨盤の回転


この骨盤の回転、歩行時と走行時で、だいぶ動きが違うようだ。

歩行時の骨盤の回転

歩行時は、「右足を着くタイミングで、骨盤の右側が最も遠くに位置するように動く」。

逆に、「左足を着くタイミングで、骨盤の左側が最も遠くに位置するように動く」。

骨盤の回転による位置をそのまま、歩行時のストライドの大きさに活かすような動作になる。


深代さんの本では、以下のように記載がある。

すなわち、ウォーキングでは骨盤の回転の大きさでストライドやスピードを稼ぎ、

さらに、

肩のラインと骨盤の回転のタイミングのズレ、つまり体幹の捻りを調べてみると、ウォーキングでは明らかな逆位相がみられます。片方の肩のラインが後方に回転すると、同じ側の骨盤は前方に回転していました。

歩行時は、骨盤の位置と、肩の位置が前後逆に動いている(逆位相)ということだ。

ランニング時の骨盤の回転

ランニングの時はというと、骨盤の回転角度が最も大きくなるタイミングは、遊脚が最も前に位置しているタイミングではない。

骨盤の回転角度が最大値を取った後、骨盤の回転角度が小さくなるところで遊脚が最も前に位置している。

この遊脚が最も前に位置しているタイミングでは、骨盤の回転角殿変化量(加速度)が最も大きくなっている。

すなわち、遊脚を前に持っていくために、加速度(力)を利用している。


深代さんの本では、以下のように記載がある。

スプリント走では骨盤回転の加速度、つまり力でスピードを導いていたのです。


さらに、肩と骨盤の動きについては、以下のように書かれている。

一方、ランニングでは、速度がジョギングのように遅いときにはウォーキングに似ています。ところがスピードが速くなりトップスピードになると肩が少し先取りして回転し、骨盤がそれに続いて回転するようになります。したがって肩と骨盤が徐々に同じタイミングで回転する。つまりは同位相になってくることが分かりました。

深代さんは、この肩と骨盤のズレの度合いは、個人差があるとのことで、このズレを応用する走り方が「ナンバ走り」だと推測している。


ランニングの時には、「骨盤の回転」を意識することは重要だが、そのタイミングは、歩く際とは全く違い、「骨盤の位置」ではなく、「骨盤の回転加速度」を意識した方が良さそうだ。

ランニング時は、着地するタイミングに骨盤の回転が最大にならないということを理解しておくと良い。


バイオメカニクスの論文の調査

ランニング時のバイオメカニクスの論文も調べてみた。

1000件以上の引用がされている、すごく有名なこちらの論文。

"The biomechanics of running"

この論文のFig.5の中に、「骨盤の回転」に関するグラフが乗っていた。


Fig.5は、少々分かりにくかったため、再構成して図を作成してみた。

やはり、ランニング時の骨盤の回転角度については、着地する前に極大値を迎える。

着地したタイミングでは、位置ではなく、加速度(力)が最大になっていることが分かる。

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歩行時とランニング時の骨盤の回転



やはり、こちらの論文でも深代さんの本と同じようにランニング時の骨盤の回転について記載されていた。

また、骨盤の傾きについては、歩行時よりも、ランニング時が、さらにスプリント時の方が、前傾の角度が大きいことも記載されていた。

上記論文内の、Fig.5「Pelvic tilt」がそれにあたるので、興味がある方は、確認いただきたい。


この論文では、骨盤の動きについて、以下のように記載がある。


まずは歩行時。

In walking, pelvic rotation is an important method of lengthening the stride. The pelvis is maximally rotated forward at initial contact to achieve a longer step length (Fig.5).

「歩行時には、骨盤の回転は、ストライドを伸ばすために重要である。Fig.5に示すように長いステップ長を達成するために接地時に骨盤が最も前に来るように回転している。」


そして、ランニング時。

During running and sprinting maximum internal pelvic rotation occurs in midswing to lengthen the stride, but by the time of initial contact, the pelvis has rotated exteriorly. This maximizes horizontal propulsion force and avoids the potential loss of speed.

「ランニング時には、ストライドを長くするために、遊脚のスウィング時に骨盤の回転角度は最大値を取る。しかしながら、接地時には、骨盤は逆に回転している。これは水平方向の推進力を最大化し、減速することを避けるためだ。」


肩と骨盤の回転についても記載があった。

The pelvis in running and sprinting also functions as a pivot between the counter-rotating shoulders and legs. For example, when the right leg is maximally forward in midswing, the left shoulder is rotated forward and the pelvis is neutral.

「ランニング時とスプリント時の骨盤は、肩と脚の回転運動の回転軸として働く。例えば、右足が遊脚時に最も前にあるときに、左肩は最も前に回転しており、骨盤は回転していない。」

この点については、深代さんの本と少々記述の内容が違う。

この論文は、骨盤を中心とした肩と脚の捻りがあると記載しており、深代さんは、肩と骨盤が同位相になってくると記載があった。

深代さんは、この肩と骨盤の位相のズレは個人差があると記載していたので、自らの走りを確認してみた方が良さそうだ。

まとめ

速く走るために、骨盤の回転が必要であることは、間違いなさそうだ。

ただし、その回転のタイミングについては、気を付ける必要がある。

脚を最も遠くに運んでいるタイミングに骨盤の回転角が最大になるわけではなく、

骨盤の回転角度は、遊脚の途中で最大値になる。

さらに、接地時には、既に骨盤は逆回転を始めている。


この動きは、骨盤の回転による「力」を利用して脚を前に運んでいるということ。

さらに、この遊脚時に骨盤の回転角度が大きいことは、推進力を維持するために重要だということ。


バイオメカニクスは万能ではない。

体の動きを知るために、バイオメカニクスは非常に役立つ。

ただし、その動きを自分のものにするには、自分の感覚が最も重要だ。

今回調査したことを、実践して、「自分の感覚」としてものにできるように、これからしっかり走りこみたいと思う。



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