迂闊だった。
その事実に気づいたのは、1週間ほど経ってからだった。
早めに出勤しなくてはいけない月曜日の朝、あと5分で家を出発するという、髭をそっているタイミングだった。
髭を剃り終わり、髭剃りを洗浄し、髪型をチェックしているときのことだった。
俺は、過去のトラウマから、髪の毛を床屋や美容院で切ってもらうことがほとんどない。
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約1週間前、横浜マラソンを控えていた俺は、伸び散らかっていた髪の毛を、いつものように自宅の風呂場で奥さんに切ってもらっていた。
その頃、色々と用事が重なっており、切りたい切りたいと思いつつも、結局横浜マラソンの前日にカットできた。
以降、俺はその髪型で横浜マラソンを走り、会社にも行き、友人とも会ったりしていた。
そして、月曜日の朝、気付くことになる。
「左右のもみあげの長さが違うぞ。。。」
よく見ると、左のもみあげの方が、右と比べると、約1.5cmほど長い。
左のもみあげは、俺的にしっくり来ているのだが、右のもみあげが異様に高い位置になっている。
これは、よく見なくても気付くレベルじゃねぇか。
だが、自宅出発まで5分を切った今、もみあげの長さを整えている時間は俺には、ない。
しかたない。
今日はこのもみあげと共に出勤するほかない。
6時半過ぎに自宅を出発すると、いつも乗る電車と比較して、空いている。
空いていると、俺の周りには空間が広がり、遠くの乗客からも俺のもみあげが丸見えになる。
「俺の左右非対称のもみあげが、バレてしまうのではないだろうか。。。」
そんな不安から、いつもはスマホをチェックしている俺の右手は、スマホを持たずに、右のもみあげを隠していた。
会社に到着すると、まだ出勤している社員は少なかった。
平静をよそおう俺。
9時を過ぎると、徐々に社員が出勤し始める。
「おはようございます。」
俺は左右非対称を気付かれまいと、少し斜めになる。
真正面から顔をチェックされると、見つかってしまう。
そう思ってのことだ。
その後の打ち合わせ、立ち話、すべての状況で、俺は斜に構えていた。
腕を組み、左足を前に出し、右の短いもみあげを隠すように、少し右を向き、斜めで相手と対峙した。
どうしても斜めの状況を作れないような打ち合わせでは、右手で立てひじをするような感じで、右のもみあげを隠していた。
とにかく、真正面から左右非対称のもみあげに気付かれるわけにはいかない。
そう思っていて、大事な打ち合わせでも上の空だった。
苦痛の時間をなんとか乗り切り、自宅へ急ぐ。
もちろん右手は右のもみあげを隠しながら。
帰宅して奥さんに、もみあげの長さが大きく違っていた事実を話す。
「あ、ほんとだ。」
「でも、誰も気づかないよ。」
「ていうか、それ、最近流行りの『アシンメトリー』だよ。」
『アシンメトリー』
なんとなく聞いたことがある。
イケメン男子が、右側と左側を非対称にする、おしゃれな髪型のことだ。
グーグル先生に聞いてみると、おしゃれな若者たちが多くあらわれる。
ほほぉ。
奥さんは、この「アシンメトリー」を狙い、俺の左右のもみあげの長さを故意に差を付けたかのような言い回しだ。。。
「そんなわけないだろ。」
まぁ、面白いし、しばらくは誰かもみあげのアシンメトリーに気付くか、このままの髪型で続けてみようかな。
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