高地トレーニング。
英語では、"Altitude Training"と言う。
多くのアスリートたちが取り入れている「高地トレーニング」について、論文ではどのように語られているのだろうか。
トレーニング方法
その効果
効果の持続期間
など、論文に記載されていることをまとめてみた。
■高地トレーニングとは
ここでは、1997年に発表された、他の論文への引用が多いこちらの論文を元にまとめる。
‘‘Living high-training low’’: effect of moderate-altitude acclimatization with low-altitude training on performance
少々古い論文ではあるが、この論文以上にしっかりまとめているものや、新しい見解が根拠付きで述べられているものは、見つけられなかった。
「高地トレーニング」が持久性が必要なアスリートに良い効果をもたらすと提案され始めたのは、1940年代頃からだった。
その頃は十分な根拠がなく、その効果については様々な見解があった。
しかし1990年代に入り、高い高度に順応することで、特に高高度による「低酸素」の状態が、体内の酸素伝搬効率や酸素利用効率を高められることが分かってきた。
一方、高高度でのトレーニングは、低酸素であることから、運動強度の高いトレーニングを行えず、筋力の低下につながり、ランニングパフォーマンス向上に寄与しにくいということも分かってきた。
そこで、近年では、高度の高い場所で暮らし、トレーニングは高度の低い場所で行う「Living High, Training Low」の考え方が広く普及している。
高度の高いところで暮らすことで、酸素利用効率を高め、
高度の低いところで高強度の運動を行う
これが、最新の高地トレーニングのセオリー、「Living High, Training Low」だ。
■高地トレーニング「Living High, Training Low」の効果
前述の論文では、39人のエリート長距離ランナーで、高地トレーニングの効果を検証している。
39人を以下の3つのグループに分ける。
1.Live High -- Train High
高度2500mで暮らし
高度2500mでトレーニング
2.Live High -- Train Low
高度2500mで暮らし
高度1250mでトレーニング
3.Live Low -- Train Low
高度150mで暮らし
高度150mでトレーニング
参加者はそれぞれ、
4週間の高度150mでの事前トレーニング
↓
4週間、3つのグループに分かれてトレーニング
↓
3週間の高度150mでの事後トレーニング
というプロトコルで実験を行った。
※トレーニング内容の詳細は、論文を参考下さい。P.2からP.3にかけて記載があります。
定期的に5000mのタイムトライアルを実施してその効果を検証している。
こちらが、5000mタイムトライアルの実験期間中の結果だ。
※上記論文のFig.5より引用
高地トレーニングの直前と直後は、
6週目と10周目の結果を比較する。
5000mのタイムが向上したのは、「2.Live High -- Train Low」のグループのみだ。
5000mのタイムトライアルの結果を見ると、高地トレーニングを終えてから少なくとも4週間はその効果が持続しているようにも見える。
しかし、5000mタイムトライアル時の天候や参加者の体調の影響もあると思われるため、グラフの結果を鵜呑みにはできない可能性もある。
高地トレーニングの効果の持続期間は、明確に「○週間」と言えるものではなく、時間をかけて徐々に薄れていくと考えるのが正解だろう。
また、血液検査も行っており、
1.Live High -- Train High
2.Live High -- Train Low
の高高度で暮らしていたグループは、赤血球の量が約9%増加していたという。
また、2001年に発表された、こちらも十分に引用が多い以下の論文。
“Living high-training low” altitude training improves sea level performance in male and female elite runners
こちらの論文でも、「Living High, Training Low」のトレーニングにより、海抜レベルでのランニングのパフォーマンスが1.1%向上すると報告している。
以下の2006年の論文では、血液検査を中心に効果を検証している。
Live high-train low for 24 days increases hemoglobin mass and red cell volume in elite endurance athletes
結果、「Living High, Training Low」のトレーニングにより、ヘモグロビン量と赤血球量が5%程度増加したと報告している。
■まとめと市民ランナーと高地トレーニング
高地トレーニングの最新のセオリーは、
「Living High, Training Low」
2500m程度の高度に暮らすことで、ヘモグロビン量、赤血球量が増加し、酸素伝搬効率/利用効率の向上を見込め、
1000m程度の高度で、高強度のトレーニングが行えることで、
全体としてランナーとしてのパフォーマンスを向上できる。
2500m程度の高度に暮らさずとも、同様の低酸素状態を作れる低酸素室があれば、同様の効果が得られる。
しかしながら、我々市民ランナーにとっては、例え3週間程度であっても「Living High, Training Low」を実践することは困難だ。
以下の記事の中で「Living Low, Training High」(低い高度で過ごし、高い高度でトレーニングする)についての見解が述べられている。
IS LIVE HIGH/TRAIN LOW THE ULTIMATE ENDURANCE TRAINING MODEL?
定期的な低酸素状態でのトレーニングにより、赤血球量の増加、ミトコンドリア密度の増加が見込める一方、検証された論文が少ないと記載がある。
低酸素状態でトレーニングを継続的に行うことで、体が順応し、赤血球量の増加やミトコンドリア密度の増加などの効果が少なからず得られることは間違いないと思われる。
我々市民ランナーであれば、普段のランニングに加えて、近年ジムなどでも体験可能な低酸素室などを利用したトレーニングもプラスすることにより、よりランニングのパフォーマンスを高められるだろう。
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