しばらく前に1冊の本を買った。
色々あって、全く読む気になれなかったのだが、少し時間ができたので、読んでみた。
アーサー・リディアード(1917年ー2004年)は、長距離走に画期的な影響を与えたことがランナーズワールドに認められたり、eA式トレーニングの基礎にもなっているトレーニング理論を確立した、ニュージーランドのランナーであり、陸上競技のコーチである。
俺が、この本を読もうと思ったのは、
リディアードの言葉に、以下のものがあることを知ったからだ。
"What you do this year is for next year"
「今年の練習は、来年のためだ」
新型コロナの影響で、大きなマラソン大会やトレイルの大会が、いつ開催されるのか分からない中、走ることに対してモチベーションが下がっている方もいるかもしれない。
逆に走行距離が莫大に伸びている方も多くてビビるが。。。
でも、今から準備をすることが、きっと来年の大会で記録を更新することに繋がる。
リディアードは、そう言ってくれている。
リディアード式トレーニング 5つの原則
リディアード式トレーニングは、以下の5つのことを原則としている。
■Aerobic Conditioning
有酸素能力の維持・向上
有酸素運動をトレーニングの基礎として、コンディショニングを行う。
■Feeling-based Training
感覚重視のトレーニング
予定されたトレーニングメニュー通りに行うのではなく、体が発するシグナルを重視して、メニューの変更は適宜行う。
■Response-Regulated
個々の体の反応に応じたバランス
個々のレベルに合わせて、距離やスピードをうまくバランスしてメニューの変更を行う。
■Sequential
段階的な能力の向上
後述する段階的なフェーズで、体を仕上げていく。
■Correct Timing
適したタイミングでのピーキング
ターゲットの日を明確にし、ターゲットとするタイミングにピークを持って行く。
リディアード式トレーニング 5つのフェーズ
リディアード式トレーニングは、「有酸素能力の向上」を基礎に置き、以下の5つのフェーズを段階的に経て、レースでピークを持ってくる。
それぞれの期間は、ターゲットのレースを「マラソン」に置いた場合の期間だ。
以下に、5つのフェーズにおけるトレーニングとポイントを説明する。
また、各フェーズについて、上記の本の著者でもある橋爪伸也さんの記事のリンクも貼っておく。
フェーズ1:有酸素能力発達のための走り込み
【目的】
基礎・土台となる有酸素能力の向上。
心肺機能の向上、毛細血管とミトコンドリアの発達、LTレベルの引き上げ。
【期間】
6週間から12週間
【トレーニングのポイント】
自分が可能な範囲で長く走る。
スピードを出す必要はない。
毎日中途半端な距離を走るよりも、長い時間の日/短い時間の日と、メリハリをつける。
息切れするほど追い込まない。
【橋爪さんの記事リンク】
www.bbm-japan.com
リディアードは、この第1段階のフェーズが最も重要だとしている。
ここの土台が大きければ大きいほど、この後のトレーニングがより効果的になるという。
そして、なるべく毎日、メリハリをつけて走ることで、回復と強化を繰り返し効率的だということだ。
以前ゆっくり走ることによる生理学的な効果を調べたが、論文で調査した内容と同じく、毛細血管とミトコンドリアの発達を促し、基礎を固めよう。
www.all-out-running.com
フェーズ2:ヒルトレーニング
【目的】
スピード練習のための下準備。
坂を利用したプライオメトリクストレーニングを取り入れ、筋力向上と正しいフォームを身に付ける。
【期間】
4週間から6週間
【トレーニングのポイント】
週に2回程度の坂道でのプライオメトリクス。
ゆっくり長くのランは継続。
ペース走を取り入れ、走力向上の確認をする。
【橋爪さんの記事リンク】
www.bbm-japan.com
プライオメトリクスとして、紹介されているのは、
スティープ・ヒル・ランニング
ヒル・バウンディング
ヒル・スプリンギング
ダウンヒル・ストライディング
の4種類。
橋爪さんの記事リンクにすべてではないが、動画も紹介されているので、チェックして頂きたい。
プライオメトリクスは、ナイキオレゴンプロジェクトでも取り入れられている効果的な練習方法だ。
www.all-out-running.com
フェーズ3:無酸素インターバル
【目的】
LTペースよりも速いスピードで走り、無酸素状態でのランニングに耐える能力を身に付ける。
無酸素能力、スピードの向上。
【期間】
4週間から5週間
【トレーニングのポイント】
週に2回のインターバル走。
ゆっくり長くのランは継続。
スピードを出し過ぎて怪我をしないように。
体の声をよく聞く。「もう1本」と無理をしないこと。
【橋爪さんの記事リンク】
www.bbm-japan.com
このフェーズでやっと、スピードを上げる。
インターバル走による持久力の向上への効果は、多くうたわれている。
ここまでのトレーニングで、脚はかなり強くなっているはずだ。
ただ、スピードを出し過ぎて怪我はしないようにすることが重要だ。
フェーズ4:インテグレーション/コーディネーション
【目的】
ここまで培ってきた有酸素能力と無酸素能力の統合。
一定ペースで走ること。
【期間】
4週間から5週間
【トレーニングのポイント】
レースより同じか短い距離のタイムトライアルを行う。
マラソンがターゲットなら、20kmとか30km。
【橋爪さんの記事リンク】
www.bbm-japan.com
フェーズ5:最終調整・テーパー
【目的】
本番にピークを合わせる。
有酸素能力をジョグで維持しつつ、シャープな練習をときおり混ぜて、本番まで体力を温存する。
【期間】
2週間から4週間
【トレーニングのポイント】
決して負担のかかる練習はしない。
基本はジョグ。
【橋爪さんの記事リンク】
www.bbm-japan.com
本番の直前は、練習の強度とボリュームを落として回復に努めよう。
以前調査した「テーパリングについて」のエントリーも参考にしていただきたい。
www.all-out-running.com
まとめ
全工程、5か月から8か月というリディアード式トレーニング。
すべての基礎となるのは、ゆっくりロングジョグで磨き上げられる、有酸素能力だ。
在宅勤務が増え、通勤時間がなくなり、自分の時間ができた方も多いだろうから、ゆっくりロングジョグで、基礎の脚作りをしてみたらいかがだろうか。
しばらくレースがない今。
スピード練習をして、怪我をしてしまうのももったいない。
スピードの向上は、レースの数か月前からでも十分間に合う。
「今年の練習は、来年のため。」
今から準備をすることが、きっと来年の大会で記録を更新することに繋がる。
そう信じて、俺も、これから数か月は、長い時間走れるような体を作りたいと思う。
応援のポチ、お願いします!
にほんブログ村